研究科長あいさつ
dean

本研究科では「総合的地域研究」を旗印としていますが、その特徴として次の4つをあげることができます。

第1に、臨地研究と臨地教育の融合あるいは一体的推進であり、第一線の研究を通して大学院教育を進めています。そのなかで学生は研究の主体的な担い手として位置づけられることになります。

第2に、学際的、あるいは文理融合を標榜しています。地域研究者は、さまざまな学問的バックグラウンドをもった人の集まりです。このことを利用して研究を進めようというのが、われわれの立場です。単に異分野の人と協力するだけでなく、個々人が専門分野を超えた研究を試みる。 そうしたいわば、領域横断的なアプローチが、自然(生態)、文化、歴史が交錯する場である地域というものを理解するのに必要だと考えています。

第3に、世界的視野に立った地域の理解や地域間の比較を視野に入れた地域研究を目指しています。特定地域のことをよりよく理解するには、他地域にも目を向ける必要があり、世界の中での地域の位置づけを常に考えておく必要があります。

最後に基礎研究と応用研究の結合を試みています。基礎研究とは、地域の特性に関する理解であり、応用研究とは、地域に関する深い理解にもとづいて地域が抱える切実な問題、たとえば環境保全とか地域開発、民族紛争といった問題を解明することです。

こうした「総合的地域研究」の実践においては、地域密着型のフィールドワークが教育と研究の柱になります。学生たちは、調査地に密着し、そこで問題を掘り起こし、さらに追求していくのですが、結果、長期にわたる現地滞在が必要となります。そこで長期的な視野に立って研究を進めることができるようにと、博士課程5年一貫制を採用しました。

しかし、途中で修士号を取得して別の方向に進む道も開かれていますから、5年間在学するのでなければ入学できないわけではありません。 また他の大学院で修士号を取得した後、3年次に編入することも可能です。

学生の研究支援の一環として、平成14年度〜18年度にかけて実施した21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成:フィールドステーションを活用した臨地教育・研究体制の推進」では、多くの学生をフィールドワークに派遣する教育研究の体制を整備しました。その後も、本研究科では、次のようなプログラムの実施を通して、アジア・アフリカにかかわる教育研究の充実をはかってきました。

・平成18〜19年度: 魅力ある大学院教育イニシアティブ「臨地教育研究による実践的地域研究者の養成」では、臨地教育を通して国際協力や開発援助の分野で活躍しうる地域研究者や地域実務家の養成を図るとともに、研究科内に「フィールドワーク・インターンシップ支援室」を設置し、学生が海外で行う研究・実践活動を制度的に支援する体制を整えました。
・平成20〜22年度: 組織的な大学院教育改革支援プログラム「研究と実務を架橋するフィールドスクール」では、上記の「臨地教育研究による実践的地域研究者の養成」を後継し、国際協力や開発援助の分野で活躍しうるアジア・アフリカ地域専門家の養成に力を入れてきました。
・平成19年度〜現在: 若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP)「地域研究のためのフィールド活用型現地語教育」では、地域研究に必要な現地語の習得や、研究成果を英語、フランス語等によって国際的に発信する能力の強化に努めてきました。
・平成19年度〜現在: グローバルCOEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」では、京都大学東南アジア研究所等とともに、21世紀COEプログラムで設置したフィールドステーションを維持、運営、活用しながら、臨地教育のさらなる充実を図ってきました。
・平成22年度〜現在: 頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム「アジア・アフリカ地域を理解するためのトライアンギュレーション・プロジェクト」が採択され、アジア、アフリカのみならず、アメリカ、ヨーロッパを股にかけた地域研究を推進することが可能となっています。

本研究科は平成20年度に設置10周年を迎えました。そして、次の新しい10年に踏み出す平成21年4月に、これまでの「東南アジア地域研究専攻」と「アフリカ地域研究専攻」の2専攻に加え、新たに「グローバル地域研究専攻」を設置しました。

「総合的地域研究」とは多様で深い意味をもつものです。今後とも、本研究科のもつ特徴を生かしながら、地域研究の教育と研究の発展に努めていきたいと思います。

研究科長 梶 茂樹