アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第34回 「メルマガ写真館」

「線路の上の日常」...内田晴子(東南アジア地域研究専攻)

 

フィリピンのマニラ首都圏、国鉄の線路脇ぎりぎりに立ち並ぶ家々。機関車がゆっくりと、すぐ近くに迫って警笛を鳴らすまで、子どもも大人も普通に線路の上で過ごしています。雑貨屋、集会所、礼拝所、生活用のトロッコがあり、選挙があれば投票にいく、そういうコミュニティが線路沿いにたくさんあるのです。

 

線路沿いに住む愉快な家族という設定で、10年続いた人気コメディ番組がありました。ある夫婦の日常を丁寧に描いて国内外で高く評価されたドキュメンタリー「Riles(線路)」(ディッツィ・カロリーノ監督、2003年)も、観客を何度も笑いの渦に巻き込みました。「都市貧困層」という概念だけでは捉えきれない世界がそこにあります。

 

アジア・アフリカ地域研究マガジン第69号(2009年3月配信)