アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第54回 「メルマガ写真館」

「タイの村に溶け込む機織りのリズム」...小林篤史(グローバル地域研究専攻)

 

これは、タイフィールドスクール(2010年度)のプログラムで滞在した村での機織りの様子です。この村では伝統的にこのバックストラップの機織り機が用いられてきたそうですが、近代化と共に商品としての布が生活に浸透し始めると、機織りは廃れてしまいました。しかし近年、村おこしの一環として、伝統文化を見直し、村人の現金収入源を創出するために、この機織りが復活してきました。マットやバックといった味のある布製品が製作され、村を支援するNGOを中心に販売されています。


写真からも分かるように、この作業はかなり腰にきます。長時間連続で作業することは重労働で、滞在した家のお母さんは暇な時間があるときに少しずつ進めていました。基本的に女の人の仕事のようです。

 

この機織り機からは独特な音が聞こえてきます。竹がぶつかるコンという音と、糸を織り込むときのギュッ、ギュッという音が重なり合って、静かな村の風景の中に溶け込んでいくリズムを醸し出していました。コン、ギュッ、ギュッ・・・コン、ギュッ、ギュッ・・・。現在、見直されつつある北タイ農村の伝統的な生活を垣間見た、そんな気がしました。

 

アジア・アフリカ地域研究マガジン第89号(2010年11月配信)