NIHUプログラム「地域研究間連携研究の推進事業」は、2013年度に開始されました。「IAS-INDAS連携事業」と通称される本プログラムは、NIHUプログラム「イスラーム地域研究(IAS)」と「現代インド地域研究(INDAS)」が互いに連携し、協働する研究事業です。この事業により、個別の地域研究プログラムの成果が持ち寄られ、地域研究プログラム間にかかわる研究領域が新たに開拓されるとともに、その成果がそれぞれの地域研究にもフィードバックされることで各々の研究を深化させ、優れた成果を上げることが期待されます。

 本プログラムが開始されるに至った経緯は以下の通りです。
 2012年度に「イスラーム地域研究」と「現代インド地域研究」の間で連携研究のテーマとして「南アジアとイスラーム」を設定し、試行的に「地域間連携研究の推進事業」(本事業の先行となる事業)をおこないました。両地域研究の研究者が一堂に会することで多彩で実りある研究会が開催されるなど、地域研究間の連携研究が有効に機能することがわかり、またそれぞれの事業推進体制を活用することで迅速な成果出版がなされるなど有望な成果が得られました。これを踏まえ、3年間(2013~2015年度)の地域研究間連携研究の推進事業「南アジアとイスラーム」が始まりました。

 南アジアは、現在、世界のムスリム人口の3分の1近くが暮らす、イスラーム地域研究にとって無視することのできない地域です。一方、南アジアからの視点で眺めるならば、5億人程度がムスリム―インドには1億7千万人を超えるムスリムがいます―であるため、イスラームの問題を無視することはできません。しかし、世界最大のムスリム人口を擁する地域でありながら、これまでのイスラーム研究において、南アジアは周縁的な扱いを受けてきました。また南アジア研究―その中心であるインド研究―においても、「少数派」であるがゆえ、イスラームの問題は周縁的な位置にあります。先駆的な優れた業績は存在しますが、「南アジアとイスラーム」というテーマは、このような状況を打破するにふさわしいものであり、イスラーム地域研究と現代インド地域研究が連携して研究を進めるに際して、最も重要なテーマの一つであるといえるでしょう。

 2012年度は、「南アジアとイスラーム」という研究課題のもと、とくに「知的遺産と現代社会」を中心的なテーマとして選択し、研究活動をおこないました。さらにイスラーム研究者と現代インド研究者の相互理解を深めるために「南アジアとイスラーム基礎研究会」が設置され、下半期からは「南アジアの造形文化」研究会が活動を始めました。
 2013年度からのNIHUプログラム「地域研究間連携研究の推進事業」では、これらを継続・改編する形で研究活動を行っていきます。

 NIHUプログラム「地域研究間連携研究の推進事業」
  「現代社会の政治と思想」研究会
  「南アジアとイスラーム」基礎研究会(2012年度からの継続)
  「南アジアの造形文化」研究会(2012年度からの継続)
  「南アジア・イスラーム国際関係」研究会
  「アキール文庫」研究会

 *「アキール文庫」研究会は、京都大学に所蔵されることになった、2万点を超えるモイヌッディーン・アキール博士コレクションを元に、ウルドゥー文献の公開と利用・活用の促進をおこなうことを主たる目的とするものです。