【ウラマー・スーフィー研究】
 ずっと以前には、「ウラマー対スーフィー」といった図式が語られていた時代がありました。それぞれ、イスラーム世界の大伝統と小伝統を担う存在、としてです。しかし実際には、伝統的イスラーム世界の中核には常にウラマーとスーフィー導師がいて、彼らは多くの場合、重なり合っていました。スーフィズムに志した民衆を指導する知識人層(スーフィー導師)は、同時にウラマーだったのです。
 同じ人物が「ウラマー兼スーフィー」でない場合も、ウラマーとスーフィーは、対立するよりもむしろ協調・協力するのが一般的でした。彼らが、伝統的なイスラームの知的資源を担ってきたといえます。
 この伝統的イスラーム知識人に対抗する形で、近代のイスラーム主義的潮流の多くが生まれてきています。とくにスンナ派では、伝統的なイスラーム教育でなく、いわゆる世俗教育を受けた人々が、イスラーム主義を担っていきます。
 人々の耳目はイスラーム主義者たちに集まりがちですが、伝統的イスラーム知識人達の役割はもう終わってしまったのでしょうか。事実はそうではありません。彼らは現在も積極的に活動していますし、引き続き多くのイスラーム教徒の支持も受けています。
イスラーム世界の実態に即した、よりバランスのとれた像を描くためにも、ウラマー・スーフィーを、もう一度きちんと根幹から見直してみる必要があります。

 スーフィズムは、タリーカや聖者信仰との結びつきのなかで民衆を幅広く巻き込んでいくこともあり、民間信仰・土着信仰などとの関連が広く研究されてきました。もちろんその側面も重要なのですが、それについては上智大学拠点が人的資源という観点から検討を進めてくれることになっています。本研究班はこのグループとタイアップする形をとりつつ、あくまでも「知的資源」にこだわって研究を進めていきます。それゆえに、スーフィズムとほかのイスラーム諸学との関連がひとつの焦点となります。
 これまで、ウラマー研究とスーフィズム研究は、別々のトピックとして扱われてきているように思えます。スーフィズム研究とその他のイスラーム諸学の研究の接合も、まだ十分とはいえません。これらを、「伝統的知と教養の変容」「宗教知識の資源化」というキーワードの元に統合することも、本研究班の目標です。

【主要な研究課題】
・イスラーム穏健主流派としてのウラマー・スーフィー研究
・知的資源としてのウラマー・スーフィー研究
・前近代と近現代のウラマー・スーフィーの変容に関する研究
・事例としてのオスマン朝期ウラマー・スーフィー研究
・事例としてのイブン・アラビー学派研究
・中東とイスラーム世界各地のウラマー・スーフィーの比較研究

【国際連携】
 本研究班では、フランスのCNRSと共同研究を進めていくことにしています。CNRSのグループは、中東だけでなく、中央アジアに関する豊富な研究蓄積をもっています。彼らの知見を、地域間比較に活かすことを考えています。
 また、トルコのウスキュダル大学とも、本プロジェクトの開始と同時に、学術的協力関係を始めました。同大学のスーフィズム研究所とも積極的にタイアップしながら、プロジェクトを推進していきます。

  • ウラマー・スーフィー研究班責任者
    • 東長 靖(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 教授)
  • ウラマー・スーフィー研究班研究分担者
    • 今松 泰(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 特任准教授)
    • 二ツ山 達朗(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域研究センター 客員准教授)
    • 丸山 大介(防衛大学校 准教授)
    • イディリス・ダニシマズ(同志社大学グローバルスタディーズ研究科 助教)
    • ティエリ・ザルコンヌ(フランス国立科学研究センター 主任研究員)