臨地教育研究による実践的地域研究者の養成

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

■■■■■■■■■■■■■■■ August 2008 第62号 ■■■■■
 アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
 Integrated Area Studies INFOrmation Magazine(IAS-INFOM)
 http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/miryoku/j/ml.html
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■【発行部数 1046 】■

___________今月号の目次_________________

□「フィールドと他者と25歳になった私と」......フィールド便り
□「野生動物の行方」............................メルマガ写真館
□ ASAFAS 院生によるフィールドワーク報告............ベトナム、
チュニジア、マレーシア、インドネシア、マダガスカル、
レソト王国、タンザニア
□ 編集子より
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■フィールド便り・17便

「フィールドと他者と25歳になった私と」
..................飯田玲子(東南アジア地域研究専攻)

私がフィールドでお世話になっている人のなかに、とても仲が
悪いAさんとBさんがいます。私はちょくちょく両方の家に顔
を出します。すると、Aさんは言います。「おまえは我が家の
娘も同然なのに、なぜ我が家に滞在しないでBの家に居るのだ?」
と。しかし、Bさんも言います。「Aの家ではこんなご馳走は出
してはくれないだろう?」と。

私のフィールドであるインド・マハーラーシュトラ州のプネー市
はとても広いのに、街中での私の行動は報告するまでもなくなぜ
か皆に筒抜けになります。Aさんの家の儀礼に顔を出しているの
もBさんに筒抜け。Bさんと一緒にお買い物していたこともAさ
んに筒抜けです。

でも、どちらかだけと付き合うこともできない話です。Aさんも
Bさんも、私にとってはそれぞれにとても良い人たちなのです。
こんな私は八方美人なのでしょうか?

どっちつかずの私は、ふたりの仲の悪さに巻き込まれているよう
で、フィールドから逃げ出そうと思うこともしょっちゅうありま
す。時には双方から厭味を言われてキリキリと胃が痛む思いをし
ます。そのたびに、透明な観察者には決してなれないことを、
文字通り「痛感」させられます。

しかし、よく考えてみると、遠く離れた日本からいきなりやって
きたよそ者の私が、勉強させてほしいと転がり込んでくること自
体、私の「生」に相手を巻き込んでいることになります。少し居
直って言えば、この世界では誰もが存在している限り「巻き込ま
れる」し、「巻き込む」のです。それは、私がインドに居るから
起こるというわけではなく、日本で生活する私にも同じことが生
じているのだと思います。

フィールドワークとは、ただ情報を収集したり、知りたいことだ
けを学ぶ場ではなく、感情をもった一個人としての「私」が色々
なことに巻き込まれたり、巻き込んだりしながら学び、成長して
いく場なのだと感じるようになりました。

去年フィールドで25歳の誕生日を迎えました。私ですらすっか
り忘れていた誕生日を覚えてくれていたのは、AさんとBさんの
ふたりでした。

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ご覧いただけます。

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■メルマガ写真館......フィールドでの写真からはじまるコラム
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「野生動物の行方」
...................山根裕美(アフリカ地域研究専攻)

これは、生後約2か月のヒョウです。ナイロビ動物孤児院(ケニア
野生生物公社の附属施設)には、様々な理由で動物たちが保護さ
れてきます。保護された動物たちの・・・・・
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(写真とエッセイの続きは上記HPでご覧いただけます)

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■京都大学 GCOE プログラム:生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点
大学院教育部会:ASAFAS大学院生によるフィールドワーク報告書(PDFファイル)
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□鈴木遥
「ベトナムとインドネシアの比較からみる有用樹種「テツボク」の
 利用の特徴とその変容」
【派遣先国】ベトナム、インドネシア

本研究の目的は、東南アジア大陸部のベトナムと島嶼部のインド
ネシアに焦点を当て、「テツボク」と呼ばれる樹種の生育地域に
おける利用の特徴とその変容について明らかにする・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/images/library/Image/report/2007_fs_suzuki_j.pdf

□竹田敏之
「現代アラブ世界の形成とアラビア語ネットワークの実態調査」
【派遣先国】チュニジア、リビア、エジプト

報告者はこれまで、文法改革と現代語の再整備に焦点を当て現代
アラブ世界の形成を論じてきた。昨年は、アラビア語アカデミー
(エジプト・シリア・ヨルダン)に関する現地調査を・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/images/library/Image/report/2007_fs_takeda_j.pdf

□柳沢英輔
「マラヨポリネシア語族のゴング文化」
【派遣先国】ベトナム、マレーシア

ベトナムではジャライ族の著名なゴング調律者であるゾーチャム・
ベット氏(73歳、ジャライ省チュパ県在住)とナイファイ氏
(52歳、ジャライ省クロンパ県在住)を訪ね・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/images/library/Image/report/2007_fs_yanagisawa_j.pdf

□LE GIANG THI HIEN
「ベトナム経済改革における国営企業の労務管理及び労使関係の変化:
建設産業の事例」
【派遣先国】ベトナム国

本研究の目的は大きく二つに分けられる。一つは、国営建設企業に
おいて、90年代初頭から内部請負制度を導入することによって、
現場の労働組織がどのように影響を与えられた・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/images/library/Image/report/2007_fs_legiang_j.pdf

□SITEPU, DEWI SINORIT
"ASEAN-CHINA BUSINESS COUNCIL:
INDONESIAN BUSINESSPERSONS' PERSPECTIVE"
【派遣先国】インドネシア

This research depends on primary data by doing in depth
interviewing with a number of Indonesian government officials
and businesspersons, and ・・・
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/images/library/Image/report/2007_fs_dewisitepu_e.pdf

■大学院生の派遣者リストは下記からご覧いただけます
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/article.php/2007list

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■セミナー情報 8月・9月のおもな研究会情報
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■研究会カレンダー
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/calendar/index.php

[2008-09-22]
第11回G-COEパラダイム研究会

[2008-09-17]
Preserving local knowledge in the Horn of Africa:
Challenges and prospects for collaborative research
in oral literature, music and ritual practices
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php?story=20080616181233916

[2008-09-16]
Islam for Social Justice and Sustainability:
New Perspective on Islamism and Pluralism in Indonesia
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php?story=20080617104124613

[2008-09-04]
Pastoral Societies in Africa
New Possibilities for Sustainable Development through
the Interaction of Scientific Researchers and Development Workers
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php?story=20080616184623625

[2008-08-12]
Workshop on Ecosystem function and conservation of tropical forests
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php/20080616172656758

[2008-08-07] Re-conceptualization of Wildlife Conservation
-Toward Resonatable Actions for Conservation-
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/en/article.php?story=20080617114409147

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◆編集子より◆今月はよいご報告があります!
魅力ある大学院教育イニシアティブ・プログラム(平成18〜19年度)
により派遣された院生による報告をすべてまとめた「実践的地域研究」が
刊行されました。現場の臨場感あふれる86本の報告が、A4版・228
頁に収められています。あらためて、アジア・アフリカ地域研究研究科の
院生が、実に多様な問題に取り組んでいることに気づき、これらの研究の
今後を思うと胸が躍ります。多くの皆様に、是非一度手にとっていただき
たいと思います(N)。
今月号から、京都大学 GCOE プログラム「生存基盤持続型の発展を目指
す地域研究拠点」によってアジア・アフリカの各地でフィールドワークを
おこなったASAFAS大学院生の派遣報告書を紹介していきます。地域研究
に関連するセミナー、研究会、国際ワークショップ・シンポジウムの案内
も再開しました。(MS)
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◆このメールマガジンは、「京都大学 GCOE プログラム:生存基盤持続型
の発展を目指す地域研究拠点」大学院教育部会の協力を得て、ASAFASフィー
ルドワーク・インターンシップ支援室が発行しています。
(http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/miryoku/index.html)

◆感想やご質問をお気軽にお寄せください。掲載希望の記事や
研究会の案内なども受け付けています。
宛先:areainfom@areainfo.asafas.kyoto-u.ac.jp

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編集/発行:
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協力:
京都大学 GCOE プログラム:生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点
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作成日: 2009年1月23日 | 作成者: 事務局
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