アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第60回 「メルマガ写真館」

「船酔い」...日向伸介(東南アジア地域研究専攻)

 

 

マニラやジャカルタと並び、タイの首都バンコクは朝夕の大渋滞が悪名高い都市です。もちろんモノレールや地下鉄もあるのですが、まだ限られた地域しか敷設されていないというのが現状です。そこで心強いのがセーンセープ運河のボートです。バンコク郊外から王宮周辺にかけて、都心のほぼ中心を貫き、渋滞もなく、料金もエアコンバスより安いくらいです。しかも水の都バンコクの優雅な水の旅が楽しめる、と思ったら大間違いで、ものすごい量の排気ガスと騒音、お世辞にもきれいとは言えない運河の水しぶきを我慢しなくてはなりません。

 

そこで気を紛らわすために、運河沿いに住む人々の日常に目を向けてみたり、150年以上にもおよぶ運河の長い歴史に思いをはせてみたりします。今ではほとんど埋め立てられてしまいましたが、かつてのバンコクには数多くの運河が存在し、陸上ではなく水上交通が主な交通手段でした。そんなことを考えていると、あっという間に目的地に着いてしまいます。そして飛び降りた船着き場から高層ビルを眺めると、時間の錯覚のせいか、船酔いのせいか、いつも軽いめまいを覚えるのです。