アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第86回 「メルマガ写真館」

「大人と子どものはざま」
...原 将也(アフリカ地域研究専攻)

 

わたしが調査するザンビアの北西部では、マキシと呼ばれる仮装をして踊るダンスが伝統儀礼として受け継がれています。この儀礼は、2005年にUNESCOの「人類および無形遺産の傑作」として採択されました。

 

マキシは男子割礼がおこなわれる7月から9月にかけての農閑期に、毎日のように見かけることができます。男の子は10歳を過ぎると割礼をうけ、1ヶ月から2ヶ月程度、森のなかで指南役である男性とともに暮らすことで、大人の男性としての心得を学びます。 割礼をうけた男の子が森で暮らしているときには、割礼をうけていない男の子や女性と接触することは禁じられています。また食事や金銭の援助を家族から受けることが許されていないため、男の子たちはマキシに扮し、村の家々を訪ね、食事や金銭、生活用具などを分けてもらうのです。マキシは手に木の枝を持ち、人間、とくに小さな子どもが近づいてくると大きな声で威嚇し、木の枝でたたきながら追い払います。そのためマキシは日本のなまはげのように、幼児から恐れられています。

 

このようにマキシに人間が近づくことは許されませんが、写真のマキシはどうしても一緒に写真を撮りたくて、仲よく友達と記念写真に収まっています。マキシのなかに入っている男の子の姿が目に浮かぶようです。割礼を終えても、大人の男性への道のりはまだまだ遠そうです。