アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第116回 「メルマガ写真館」

「遊び場になるトゲだらけの柵」
...田 暁潔(アフリカ地域研究専攻)

 

ケニアに暮らす牧畜民マサイのホームステッドは、トゲのある木の枝を高く厚く積み上げた柵で囲まれています。ライオンやヒョウ、ハイエナなどから家畜を守るために、長くて鋭いトゲをもつアカシア属の樹木が使われます。

 

調査を始めたばかりの頃は、「子どもにとって危ない柵だな」と思っていました。しかし意外なことに、子どもたちはこのトゲのある柵をおもちゃの収納棚にしたり、遊び道具を作る材料や小動物・昆虫を採集する場所として日常的に使っています。

 

この写真は、ある朝、家畜の搾乳を終えて遊ぶ5歳の少年を撮影したものです。彼は裸足で柵に登り、トゲを避けながら手を慎重に奥のほうへのばして、丸い植物の実をたくさん採ってきました。それは彼の「ウシ」でした。並べた「ウシ」のなかで一番大きな実は「種ウシ」だと私に教えてくれます。しばらく遊んだ彼は、再び柵に登って「ウシ」をトゲの奥に片付けて、家畜の放牧に出かけていきました。