アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第117回 「メルマガ写真館」

「猟犬と野鳥と人間と」
...佐久間 香子(東南アジア研究所)

 

この写真を撮影したのは、マレーシア・サラワク州の内陸部に建てられた、遊動民の定住村(ロングハウス)です。この村に訪れるといつも私は、動物がとてもリラックスしている様子に魅せられます。この村では、猟犬を除くと、家畜と野生動物に明解な分類はありません。檻に入れられているわけでも、紐で繋がれているわけでもないのに、いつも同じ家のそばにいるサルがいる一方で、サラワクの在来民村落でよく見かける家畜のブタやニワトリはいません。

 

ここに写っているサイチョウがくわえているのは、村の小学校で使用しているノートの切れ端です。その横で昼寝していた猟犬は私の気配に気づいて、ムクっと起きて様子をうかがっています。

 

そもそもサイチョウなんて、森で生活していても遭遇する機会は少なく、見かけたとしても大抵は野太い鳴き声を発しながら高い空を飛んでいく姿くらいです。人間の住居で我が物顔で戯れ、くつろぐ彼らの姿に私の方が驚かされ、すっかり魅了されてしまいました。こんな動物たちの姿は、私がこれまで主に調査をおこなってきた、古くから内陸交易拠点だったロングハウスの周囲では、一度も見たことがなかったのですから。