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東南アジア地域研究専攻
第3回 子島進:連環地域論講座

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「インダス川の豊かなめぐみ」
2001年夏、パキスタンはファイサラバードの思い出です。 ファイサラバードは、パンジャーブ州第2の都市であり、もともと農産物の集積地として発達しました。この町を訪れたのは、いわゆる「塩害」の実情を見たいと思ったからです。農学専攻で、塩害対策のNGOも開始したYさんが紹介してくれ、Yさんと共同でNGOを運営するアムジャッドさんに案内してもらいました。
塩害とは、簡単に言うと、地表に塩がたまり、耕作が不可能になる状態を指しています。灌漑用水路のメンテナンスが悪く水が漏れるとき、地下水位が上昇し、塩もまた地表に集積してくるわけです。アムジャッドさんに見せてもらった塩害で悩む耕地は、実際けっこうな広さで、パキスタン農業への深刻な影響をうかがわせるものでした。
しかし、このとき私が圧倒されたのは、実は「インダス川の豊かなめぐみ」でした。写真は、インダス川から水を引いてきている用水路です。日本の感覚で言えば、立派な川ですが、これはインダス川の灌漑システムでいえば、もう末端に近いところに位置しています。本流から遠く離れた何本目かの支流なのです。この用水路の周りに小麦や綿畑がどこまでも広がり、水牛がのんびりと水浴びをしています。荷物の運搬には活躍しているのはラクダです。もちろんやぎや羊もあちこちで見かけます。このような用水路網が縦横に張り巡らされた緑の大地、それがパンジャーブです。
パキスタンといえば、アフガニスタン空爆から最近のインドとの緊張まで、なにやら「危険な場所」というイメージがあります。しかし、パキスタンに行っていつも思うのは、「ああ、ここは豊かな土地なんだなあ」ということです。調査で楽しいのも、この豊かさを実感するときです。
From: 子島 進 (連環地域論講座)