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東南アジア地域研究専攻
第5回 岩田明久:生態環境論講座

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今日は。お元気ですか。
今日もまたラオスからの便りです。今は3月、乾季のど真ん中、舗装されていない道路からは赤い土煙がもうもうとあがり、調査の終わる夕刻にはみんなドロダンゴ状態です。
いつも魚や漁具の写真ばかり送っていますので今日はちょっと違うものをご紹介します。南ラオスのサバナケット近くで面白いものを見ました。竹で編んだ円錐形の籠を逆さに固定し、そこから滴り落ちてくる液体を竹の樋で下の瓶に貯めています。いったいなにをやっていると思いますか。実は塩水をとっているのです。こんな内陸部で!このあたりからタイ東北部、ミヤンマーのシャン州にかけて塩を含んだ赤色粘土層が続いていて、乾季になると大地の表面に白い塩の華が咲くのです。気温三十度を優に越す炎天下に小さな霜柱の上をサクサクと歩いているようで妙な気分ですよ。これを泥ごととってさっきの竹籠にいれ、水を注いで下から垂れてくる塩水を集めているのでした。次は瓶に溜まった塩水を煮詰めれば塩の出来上がりです。
この地域では雨季になると沢山の小魚が水田や小溝などの身近な環境で捕れるようになります。これを材料に、ここの人たちはパーデクという食物を作ります。小魚の塩辛です。この食品はラオス人にとって米の次に大事なものです。作り方は小魚とぬか、そして大地から取れた塩(グワキーター)、これを混ぜて三ヶ月以上ねかせれば出来上がり。
稲作でとれるぬか、その田んぼやその周りで捕れる小魚、そしてここの大地から取れる塩、この三つの生態資源が紡ぎ合わさってパーデクという、この地域を特徴づけるような、ここの文化にとても大切な食べ物を作り出しているんですね。
それではまたお便りします。さようなら。
From: 岩田明久 (生態環境論講座)