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東南アジア地域研究専攻
第11回 東長靖:連環地域論講座

To: The Readers of ASAFAS Home Page, JAPAN
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(1枚目からの続きです。ちなみに写真で私が足をかけているのが、ブックフェア会場内を走っている路上電車です) 
「叡智の学」というのは、サファヴィー朝下で発展した、シーア派神学と哲学とスーフィズムが混ざり合った神秘的哲学です。イランでは、16世紀にサファヴィー朝がスーフィズム(とくに民衆を動員したスーフィー教団)を敵視・弾圧して以来、スーフィズムはよくないもの、これに対して叡智の学はイランの輝かしい伝統の一部だと考えていることを、私も本で読んで知ってはいましたが、こうまではっきり、全然違うものだ、と言われたのは初めてでした。しかも相手は、研究者ではなく、ふつうのイラン人なのです。
私たち外部の研究者がみんなスーフィズムに入れて考えているこの思想を、彼らがスーフィズムではないと考えているとすれば、同じ「スーフィズム」という言葉を使って議論しても、まるきりすれ違ってしまう可能性があります。スーフィズム像の見直しが必要だ、と確信したのも、この時でした。
こういうスリリングな会話を楽しみながら、現地の書店をめぐる日々が続いています。今年は、これからイランとタイにも行くつもりです。またお便りします。さようなら。

「路上電車は会場内の足」


From: 東長靖  (連環地域論講座)

1枚目に