東南アジア地域研究専攻
第13回 山口潔子:地域進化論講座

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ふとした転機  地域進化論講座  山口潔子
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2003年の8月下旬、東南アジア研究専攻のWさん(在マニラ)が、私のフィールド地、セブに遊びに来てくれた。フィールド地で会う研究科の人や先生は、日本で会う彼らとは一種違って面白い。Wさんは、ますます「気遣いの人」となっていたため、ますます「愚痴の人」と化していた私のストレス話を3泊4日間吸い取ることとなった。

さて、二人でSogod町(セブ州東北部)のAビーチに行った。帰国前の贅沢旅行である。ダイニングで周りを見渡すと、東アジア人が多い。日本のバブル期が終わってから、セブのリゾートに押し寄せている韓国人観光客たちだ。関空―セブ便が廃止され関空―ソウル直行便が開通したことからも分かるとおり、今や韓国人新婚旅行客によって支えられているセブ州のリゾート産業である。お金になる、となれば、ホテルには日本語デスクのかわりに韓国語デスクが設置され、タクシーの運転手さんは韓国語を学び、マリアッチ(客のリクエストに応じて甘いセレナーデなどを歌ってくれるギターバンド)も韓国語ソングを歌う。臨機応変できるセブの人々は賢い。

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今振り返れば、このリラックス旅行が、私の研究の転機だったのだと気づく。この旅行の最終日から、「1町密着型」から「広く浅くセブ州全体型」フィールドワークに切り替えることとなったのだ。Sogod町からセブ市の下宿までの帰路、せっかくだからとヴァンの運転手にチップを渡して、数回途中下車をし、歴史的な教会の写真をとった。
「時間あったら、他の町も回りたいんやけど、帰国まで2ヶ月しかないしなぁ」「広く浅く教会図鑑作ってもなぁ」と言うと、Wさんは「誰もやってないし、セブの人もそういう資料が欲しいかも」と言った。

それから1週間後、予定していたインタビューが突然キャンセルされた。またか、と思ったが、レンタカー+運転手を既に予約していたので、「ちょっと」出かけることにした。その日から、私の各ポブラシオン(歴史的な町の中心地)巡りが始まる。そして、「1町密着型」の時に思い込んでいたセブ像が間違っていたことや、逆に、何か「セブ的な都市骨格」のようなものが浮かび上がってきた。「ちょっと」だったはずが、最後の2ヶ月は各ポブラシオンの都市図作りに没頭した。「あーあ、暮らしてるだけやわ私のフィールドワークなんて」とだらだら過ごしていた1年間がもったいなく思えるほど、私には面白いテーマだった。あの時、「いいじゃん、やれば?」と励ましてくれたWさんに、感謝!

 
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From: 山口潔子  (地域進化論講座