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第2回(通算第27回)
「アイデンティティって何だろう」
杉島敬志:地域進化論講座

Contents

1.アイデンティティ

2.自己所有

3.違和感からの出発

4.おわりに

4おわりに


 くりかえしのべるが、既存の学問やそこでつかわれる基礎語彙をわれわれは大いに吸収すべきである。しかし、そうするのは、学問という名のもとにおこなわれる言語ゲームに没入するためではない。
 このゲームをなりたたせている言葉には、アイデンティティのように、それを道具として研究をすすめてゆくと、研究の対象であるはずの現象のなかにわれわれを埋没させ、われわれをその再生産に奉仕させるものがたくさんふくまれている。だが、われわれが研究をおこなうのは、あくまでも何からの現象を理解するためであり、その再生産に従事するためではない。
 この二つの道のうち、われわれは容易に後者の道にみちびかれてゆくが、そうならない抵抗力をたくわえること、このことのために、われわれは既存の学問やそこでつかわれる基礎語彙を深く学ぼうとするのである。

4)インドネシアの首都
ジャカルタにあるショッピングセンター


参考文献
マクファーソン、C・B 1980 『所有的個人主義の政治理論』藤野渉他訳、合同出版。[Macpherson, C.B., 1962, The political theory of possesive individualism, Oxford: Oxford University Press.]
杉島敬志 1999 「土地・身体・文化の所有」杉島敬志(編)『土地所有の政治史』11-52頁、風響社。
杉島敬志(編) 近刊 『人類学的実践の再構築』世界思想社。
鷲田清一1993/1994 「所有と固有――ジョン・ロックの《所有》論をめぐって(上・下)」『Iichiko』29号、81-85頁、30号、90-106頁。
―――― 1995 「〈わたし〉は誰のもの?」『THIS IS 読売』5巻12号、120-129頁。