先日9日間の「ネパール・フィールドスクール」を開催しました。参加した15名の大学院生のほとんどにとってはじめてのネパールでした。ネパールの人たちの人あたりのよさ、親切さ、ふところの深さに触れて、多くの学生が「この国でほんの2、3年前まで内戦がおこなわれていたなんて信じられない」と言いました。


 ネパール共産党(毛派)とネパール政府の間の戦いは1996年にはじまり、2006年に終結しました。考えてみるとぼくが大学院生としてネパールでフィールドワークをしていたのはすべて「戦争 中」だったのです。比較的激しい戦いが行われた西ネパールに住んでいたぼくは、毛派からも政府側からも一度も脅迫されませんでした。「遠い国から来て勉強をしている学生」であるぼくを周りの人たちはいつも大切にあつかってくれたし、治安部隊も毛派もどの政党のひとたちも、ぼくが村に住んでいることに文句を言いませんでした。

 10年間の戦争で一万人以上のネパール人が亡くなりました。この戦争がなぜ起こったのか、そしてなぜ和平が可能だったのか、政治学や経済学や社会学の視点からいろいろな分析が行われています。しかし内戦や戦後の混乱のもとで生き延のびる人々の知恵は、文書や統計資料の分析からだけではわかりません。その人たちと一緒に歩き、田畑でとも働き、ともに飲み食いをしながら、この人たちの生活を可能にしているものを少しずつ学んでいく。そのようなフィールドワークの基本を、フィールドスクールを行うことを通して、あらためて思い起こしました。

(藤倉達郎)