石川 喜堂

石川 喜堂(イスラーム世界論講座)
「スープ屋での出来事」

                                        2015Dec_ishikawa
    交通量の多いアミーレ・キャビール通りを東進し、議会図書館に向かうときに差し掛かる交差点の北東にそのスープ屋はあります。私は日ごろの野菜不足を補うために、図書館からの帰りがけにそのスープ屋に通っていました。店に入ると、スープが煮られている大釜が口を開けて出迎えてくれます。そして、気さくな従業員の方々に料理を注文し、それを受け取り、隣の人と肩がぶつかりそうな席(立ち食い用のみ)に向かいます。それらの客席では、日本で昔働いていた人、イランの元ボディービルディングチャンピオンなど様々な背景を持った人たちがスープを食べています。

    私は、その店で普段スープを注文していたのですが、従業員の中で一番年配の方が作っている丸い食べ物のようなものが気になっていました。最初は、スープより腹持ちが悪いのではないかといぶかしみ、注文するのを控えていましたが、作っている方の勧めもあり、ある日その食べ物を注文しました。注文すると、その従業員の方が油の入ったお湯のようなものを丸い食べ物にかけてくれました。スプーンで崩して食べるものだと説明してくれました。早速、崩して、食べてみると、香辛料で味のついたご飯の中にどことなく懐かしい酸味を感じました。覗くとなんと梅干しのようなものが入っていて、食べ方こそ異なりますが、まるで、おにぎりのようだなと感じ、自然と笑みがこぼれました。驚きと、酸味の爽やかさで、明日も頑張ろうと思うのでした。

    【「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」第150号(2015年12月)第115回「メルマガ写真館」より引用】

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