岩倉 洸

岩倉 洸(イスラーム世界論講座)
「イスティスの硫黄温泉」

                                        

    アゼルバイジャンの首都バクーから南へ300キロメートル弱進むと、ランカランという都市があります。気候が年中温暖で雨も多く、蜜柑や茶の生産地であることから、まるで地中海沿岸の国に来たような錯覚を覚えるアゼルバイジャンでは珍しい都市です。

    このランカラン市の郊外には、温泉があります。しかも、海外では珍しく、なんと裸でも入ることができます。市の中心部から42番のマルシュルートカ(小型乗り合いバス)で終点まで行き、タクシーに乗り換えます。そこでサナトリィ(保養所)に行きたいと言うと、15分ほどでイスティスという名がつけられた温泉の、寂れた青い建物が見えてきます。

    タクシーを出ると強烈な硫黄の匂いと、湯治に来ている地元のおばあさん達が出迎えてくれます。1時間3マナト(約220円)の料金を払うと写真のような硫黄温泉を水着無しで堪能することでき、さらにおばあさん達があれやこれやと質問攻めをしてきます。

    ソ連時代には共産党幹部も訪れたという人気の保養地だったとのことでしたが、今では地元老人が井戸端会議をするための場所になっているようでした。資金不足から建物はソ連時代のままです。

    私はこのように裸で温泉に入るという日本とアゼルバイジャンの意外な共通点を発見して驚くと共に、鄙びた建物にソ連時代のノスタルジーを感じるのでした。

    【「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」第156号(2016年6月)第121回「メルマガ写真館」より引用】

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