桐原 翠

桐原 翠(イスラーム世界論講座) 「ディアスポラ・アフガニスタン知識人―ハーシム・カマーリー博士を訪ねて―」

    マレーシアにはマレー系、華人系、インド系と主要な民族がいます。もちろんこれだけではなく、他国から移住してくる人々もいます。今回は、マレーシアに移住したアフガニスタン人を訪ねました。

    アフガニスタンでは半世紀近く戦乱が続き、ディアスポラとなっている人々も多くいます。マレーシアに居住するアフガニスタン人は5,000人ほどと言われています。私が出会ったアフガニスタン人のほとんどは学生でし た。彼らは同じイスラーム圏としてのマレーシアでの食事などの生活状況についての話や、さらに女性が直面する様々な問題への対応を知ることが出来ました。たとえば、アフガニスタンで通常女性たちが着用する物はブルカと呼ばれる頭からすっぽりとかぶり全身を包んでしまうものですが、マレーシアでは、伝統衣装とされるバジュクロン(マレー:Baju Kurung)というロングドレスの様な物を着用し、マレーシアで生活していくための工夫を行っているようでした。

    またディアスポラ知識人の代表として、現在マレーシアを拠点としているハーシム・カマーリー博士も訪ねました。博士は今年で72歳でありながら、よく国際会議へ足を運び、年に何冊も出版物を刊行されるなど、とても活動的な方です。博士には博士の研究所でお会いしたのですが、初めてのインタビューであったため、とても緊張しました。カマーリー博士のお部屋へ通されると、緑茶が出されました。マレーシアではテー(マレー:Teh)と呼ばれる甘いお茶がほとんどであったため、緑茶を出して頂いたことに嬉しくなりました。

    今回は、博士自身のこと、そしてディアスポラ・アフガニスタン人の役割、イスラーム法学の現況やイスラーム世界についてインタビューしました。博士は学生時代と博士号取得後に英国、アメリカ、カナダで暮らしていた経歴があります。まだハラール認証マークがついた食材など英国には存在していなかったその当時、食事はどのようにしていたのかと尋ねました。すると、微笑みながら魚はハラールであるため魚料理を中心にしていたとお答えになりました。さらに、魚料理のなかでも「フィッシュ&チップス」が好物であるとおっしゃっていました。ここから、他国で生活していく際の工夫についても知ることが出来ました。

    1時間30分ほどのインタビューでしたが、博士の著作のみでは知ることのできない博士のあたたかいお人柄と他国での生活の工夫についても知ることが出来ました。また、近々、訪問したいと思っています。
    【「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」第156号(2016年6月)「フィールド便り」より引用】
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