塩見 浩之

塩見 浩之(イスラーム世界論講座)
「イスラーム世界の寛容性」

                                        
    マレーシアの首都クアラルンプールから南に2-30kmほどに位置するプトラジャヤは、マレーシアの行政機構が集中する都市です。この美しい都市を訪れ、私が特に惹かれたのは、このプトラ・モスクです。通称ピンク・モスクとも呼ばれるこのモスクは、プトラジャヤでも指折りの観光スポットとなっています。私のような非ムスリムにも解放されています。

    このプトラ・モスクに限らず、イスラーム世界ではモスクが観光客や異教徒にも解放されていることが多く見られます。ここでは入り口で女性用のローブも貸し出されています。モスクに足を踏み入れた際、荘厳なモスクの雰囲気も手伝い、まるでイスラームの懐の大きさに包まれているような気分がしました。

    モスク内部は、外観同様にピンクを基調とした暖色に彩られ、非常に美しいものでした。観光客に説明を行うスタッフから、数千人単位での礼拝が可能な収容能力のこと、内部の設備や美術に関してなど様々なお話を伺うことができました。

    とても印象に残ったのは、内装にイランやモロッコの美術様式を取り入れていることでした。特に、私のフィールドであるイランの古都イスファハーンのモスクを想起させる、見事な蜂の巣状の装飾が強く印象に残りました。国や宗派を問わず、良いものを取り入れていこうとする姿勢には感銘を受けました。

    悲しいことですが、テロや紛争など、近年のイスラームに関わる報道はネガティブな出来事が多くを占めています。しかし、実際にイスラーム世界を訪れると、いかに寛容性に溢れているか、ひしひしと感じることができます。こういった部分をしっかり伝えていかなければならないのだと、身が引き締まる思いです。

    【「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」第153号(2016年3月)第118回「メルマガ写真館」より引用】

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