• KIASグローバル研究セミナーClaudia Baumgart-Ochse氏講演会"Palestine and the International Statebuilding Agenda: A Way Forward to Peace?"
    (2014年7月9日 於京都大学)


    ・日時:2014年7月9日(水)16時30分~18時
    ・場所:京都大学吉田キャンパス本部構内総合研究2号館4階会議室(AA447)

    ・使用言語:英語(通訳なし)

    ・プログラム:
    講演者:Dr. Claudia Baumgart-Ochse (Researcher and member of the Executive Board, Peace Research Institute Frankfurt)
    講演タイトル:"Palestine and the International Statebuilding Agenda: A Way Forward to Peace?"

    主催:
    京都大学イスラーム地域研究センター(KIAS)
    EUインスティテュート関西
    京都大学科学研究費基盤研究(C)「中東現代文学における「祖国(ワタン)」表象とその分析」




 本報告では、はじめに大きく三つのテーマが設定された。第一は、イスラエル・パレスチナの「二国家共存」を目指す和平交渉、第二は、国家建設に関わる国際的なアジェンダ、第三は、2000年代から進められている国家建設への評価である。なかでも、発表者は、イスラエルとの和平交渉の頓挫と軌を一にして進んだパレスチナの国家建設により重心を置いて報告を行なった。そして、現在まで進められている国家建設を、治安の整備、法的規範の確立、財政状況などの観点から考察し、サラーム・ファイヤード元首相による財政・制度改革の試み(通称「ファイヤード・プラン」)については一定程度評価しつつも、いずれの観点においても主権国家としての体裁を整えるレベルには達していないことを指摘した。そして、パレスチナ国家の建設に向けては、現在与えられている援助金を効果的に用いるために、制度的、政治的な変革が必要であると主張し、報告を締めくくった。発表後のフロアからの質問では、パレスチナ人の間に広がる政治への不信感の問題が提示されたほか、発表者が前提としている二国家共存という和平案の妥当性という根本的な問題についても議論が行なわれ、パレスチナ問題の現状と将来を考える上で非常に有意義な講演会となった。

山本健介(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)