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アジア・アフリカ地域研究情報マガジン 第234

■■■ December 2022 第234号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数 1,030】■■■■■■

__今月号の目次 Contents_______________
□ フィールド便り.................. おじさんの自転車
□ メルマガ写真館.................. もうひとりの弟に祈りを捧げて
□ お知らせ..............................グローバル地域研究専攻 オープンキャンパス 2023冬
□ 最近の出来事..................... Facebook・Twitter情報
□ 編集子より
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■ フィールド便り Letter from the Field
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「おじさんの自転車」
森口遥平(グローバル地域研究専攻)

 インドでは「リクシャー」と呼ばれる人力車がよく街中を走っています。三輪バイクのものと自転車のものがありますが、いずれにせよ、運賃は(交渉次第では)安いし、暑い日差しに照らされながら歩くよりはるかに楽なので、今夏のインドでの調査において、大学図書館と宿舎の移動では、ほぼ毎日利用してました。
 ある日、図書館でアラビア語とペルシア語で書かれた古い写本の調査をしてから、いつもどおりに自転車のリクシャーで帰ってきたときのことです。運転手のおじさんに運賃を支払ったあと、私はふとこんな提案をしてみました。「その自転車、僕に漕がせてくれませんか。で、おとうさんは後ろの席に座ってください」。
 実は、毎日毎日乗っているうちに、ふと自分も人力車を漕いでみたくなっていたのです。そのときの私は、いくらこちらは見ず知らずの外国人とはいえ、まあ自転車ぐらい貸してくれるだろう。2、3分おじさんを乗せて走ったら、返してそれでおしまい。なんなら多少の金をレンタル代として払ってもよい、という気持ちでした。
 しかし、おじさんの回答は、ノー。曰く、「俺はこいつで生きてるんでね。万が一、壊されてしまったらと考えると、怖くて使わせるわけにはいきませんよ」。
 その言葉に私は愕然とし、また自分の無知を恥じました。こちらからしてみれば、単なる乗り物にすぎない自転車ですが、おじさんにとっては日々の糧を得るための貴重な手段だったのです。よく考えれば、自分の命がかかった道具を他人に気軽に使わせるわけはありません。万が一自転車が壊されでもしたら、新しい自転車を購入しなければいけませんが、おそらくおじさんの日々の稼ぎでは相当難しいはずですし、生活のすべがなくなったせいで、野垂れ死にということもありえます。
 自分自身の価値観を普遍のものとして、他者に接してしまったその日の私は、自転車をキコキコ漕いで去っていくおじさんの背中をただただ見つめることしかできませんでした。

写真:調査をしていたアリーガル・ムスリム大学の正門

(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/637609788162522

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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「もうひとりの弟に祈りを捧げて」
川口千尋(グローバル地域研究専攻)

 私には弟が 2 人います。1 人は 19 年前に生まれた日本の弟で、もう 1 人は 10 月末に行われた「ティハール」というお祭りで姉弟の契りを結んだネパールの弟です。
ティハールは富と豊穣の神ラクシュミーを家に招くお祭りとして知られていますが、その起源には死を司る神ヤマの伝説が関係しています。期間中、人々はカラスや犬、雄牛に祈りを捧げます。これらは全て、ヤマに会うことを切望した妹のヤムナを支えた動物たちであるといわれています。
ティハールの最終日には、兄ヤマに会って祈りを捧げることができた妹ヤムナに倣って、女性たちが兄弟の無病息災を祈る「バイ・ティカ」という儀式を行います。私は 3 年前に出会ったシングルマザーの息子にバイ・ティカを施しました。
ネパールにおいて、シングルマザーは家族の名誉(ijjat)を傷つける存在として扱われることも多く、子を連れて村に帰ることができない例も少なくありません。また、父親が分からないシングルマザーの子が、母親の姓でパスポートや選挙への投票権を得ることができないという状況も続いています。私がこれから行う研究が、ネパールの弟やシングルマザーたちの置かれた状況を社会に伝える一助となることを願いながら、ティハールの儀式を終えました。

写真1:バイ・ティカを行う筆者
写真2:ラクシュミーを迎えるための装飾
写真3:儀式を終え、ティカ(額の赤い印)とマラ(首飾り)をまとった犬

(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid032SBGHYURKhZiXk2199GN5FLjThpGsX4KQzEurvq9rbFADU7CnPrPkMx5nLFN6U1Xl

(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/

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■ お知らせ Announcements
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□ 専攻別 2022年度 オープンキャンパスの開催
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◆ グローバル地域研究専攻 オープンキャンパス 2023 冬
日時:2023年2月21日(火)13:30 - 18:00ごろ
参加申込URL:https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/oc/oc-global2023feb/

*オンライン会議システムZoomでの開催となります。   
*詳細情報と申込方法は上記の研究科ウェブサイトで公開しています。

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■ 最近の出来事 Recent Topics
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■ 編集子より From the Editor
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 サッカーのW杯も終わり、本格的に寒くなってきました。W杯中は日本が勝ち進むたびに、ネパールの友人からSNSで、「日本勝ったね!」とメッセージがありました。前回のブラジル大会のときは、ちょうどネパールにいた私。ネパールは出場していなくても、人々のW杯への関心はとても高かったです。私の調査地の山間部では、規定の大きさのフィールドがとれず、かなり歪つな形のフィールドで、サッカー大会が頻繁に開催されていました。大人も子どもものんびりとフィールドを囲んでサッカーを観ていた日々が、とっても懐かしくなりました。他方、今大会ではスタジアム建設に携わった多くの出稼ぎ労働者が命を落としたことも、忘れてはなりません 。
                          (Y.T.)
  
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京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)広報委員会
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協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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