アジア・アフリカ地域研究情報マガジン:メルマガ写真館

第102回 「メルマガ写真館」

「バイクの価値は様々」
...廣瀬 ケーナ(東南アジア地域研究専攻)

 

バイクタクシーのセオム(セは「車」、オムは「抱く」の意味)をはじめ、バイクは市民の足として安価で便利な移動手段です。かつてはバイクを所有することがステータスであったベトナムですが、社会主義経済を廃し資本主義経済化を推し進めるなかで、バイクはハノイ市ではすでに飽和状態となり、購買志向がバイクから自家用車に変わりつつあるという話も耳にしました。

 

バイクは乗り物としてだけでなく、セオムの運ちゃんの客待ち中の昼寝のためにも使われます。現地の友人に「信じられない、なぜバイクの上で何時間も寝ていて落ちないの?」と尋ねたところ、「彼はバイクからは落ちてないけど、人生からは落ちかけだよ」と返されました。友人のような安定したオフィスワーカーがセオムの運転手を見る目も、格差が急激に拡大するなかで変わってきたのかも知れません。物の持つ意味は、その社会や時代によって、大きく変わってくるのですね。