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中溝和弥先生が「第3回地域研究コンソーシアム研究作品賞」を受賞しました.

中溝和弥 准教授が「第3回地域研究コンソーシアム研究作品賞」を受賞しました。(11月9日)

地域研究コンソーシアム賞:http://www.jcas.jp/about/3.html

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(講評)

 中溝氏の著書は、宗教暴動を政治学の立場から、政治変動特に政党政治と選挙過程に関する体系的分析を通して、暴力の政治的帰結という主題として捉えた作品である。政党政治分析という政治学の王道をゆく分析枠組みをとりながらも、10年以上にわたる現地調査ではビハール州に焦点をあてた暴動に関する豊富なインタビュー調査を用い、ローカルな制度分析とともに地域研究として価値あるモノグラフに結実している。本書の特に優れている点は、第1に、政治学だけでなく、社会階層、社会運動論の方法も駆使し、社会階層とカースト分析とを組み合わせて宗教動員モデルを構築し、これによって宗教と暴動をインドの政治社会構造の変容によって解明しようとした点にある。さらに、社会階層分析をより精緻化するために、カースト制度の流動性に着目したこと、現代インドの権力構造理解には20世紀初頭に遡って歴史的視座も持ち合わせているところも評価される。
 第2に、政治変動をたんに政治的な要因のみで説明するだけではなく、緑の革命の導入によってビハール州農業の経済状況が改善され、それに伴って同州の社会・経済的階層構造も次第に変化していったという経済的要因も政治変動の媒介変数として用いた点が挙げられる。この経済的変化によってカースト制度にも影響が及び、それがひいてはカースト制度と政党構造の関係を変化させる結果をもたらしたという分析は理論的で説得力がある。
そして第3に、本書の主要な分析枠組みの一つである「暴動への対処法」の、一次資料を中心とした豊富なデータに基づく精緻な検証である。このアプローチは、インドにおける政治的暴力を、先行研究のように暴力の原因を探るのではなく、その政治的帰結の分析を通じて暴力の克服までを見据えるという、民主主義と暴力の関係を新しい角度から捉えた斬新な研究である。
以上により中溝作品は、地域研究に政治学を適用する場合の新しい可能性を示したものとして高く評価され、研究作品賞に相応しいものである。

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