「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」バックナンバー

メールマガジンバックナンバー 
■■■ October 2013 第124号  ■■■■■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
Integrated Area Studies INFOrmation Magazine(IAS-INFOM)
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■【発行部数 1168】■■■■■

__________今月号の目次_______________

□「ケニア、マサイの村にて」....................フィールド便り
□「村のフランスパン」........................メルマガ写真館II
□お知らせ ..................................セミナー情報など
□アフリカ地域研究資料センター情報 ..........セミナー情報など
□編集子より
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■フィールド便り
~みる・きく・ふれる:アジアとアフリカのフィールドから~
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「ケニア、マサイの村にて」
    ..................松隈俊佑 (アフリカ地域研究専攻)

起きて。始まるよ。

静かな声で呼びかけられて私は目を覚ました。部屋の外に出ると、
10歳前後の4人の少年と、私のホストファザーが緊張した面立
ちで立っていた。ホストファザーは心なしか同時に少し嬉しそう
に見えた。

時間は朝4時。星たちが瞬いており、まだしっかり夜の空であっ
た。今から4人の少年の割礼が始まる。
4人とも緊張した顔付きではあるが、身体にナイフを入れられる
ことについて、むしろ待ち遠しく感じているようでもあった。
とくに、4人のうちのひとり、ラサロという名の少年には、早く
割礼を受けたい理由があった。

一ヵ月前のことであった。ラサロは数人の友人たちと一緒にゴム
製の小さなボールでサッカーをして遊んでいた。彼らは最初から
ボールの取り合いをして遊んでいたが、次第に熱が入って互いに
少しずつ手が出るようになり、そうこうしているうちに、ラサロ
はひとりの少年を突き飛ばしてしまった。
突き飛ばされた少年はしばらく倒れたまま動かなかったが、ラサ
ロが目を離した隙に、手元に転がっていた少し太めの木の棒を掴
んで、「オルメモラタのくせに!」と叫びながらラサロの頭頂を
思いっきり殴りつけた。
ラサロの頭には血が滲んでいたが、彼はその場に立ち尽くして反
撃しなかった。何も言い返さずに口をつぐんでいるが、やりきれ
ない悔しさがその顔に浮かんでいた。彼に向かって吐かれた「オ
ルメモラタ」という言葉は、割礼をまだ受けていない少年を罵る
ときに使われる言葉だったのである。ラサロを殴りつけた少年は
ラサロより年下ではあるが、半年前に割礼を済ませていたのだ。

割礼を受ける年齢や時期は、家族構成や兄弟の都合によってひと
それぞれである。そしてラサロは今日、ついに割礼を受ける。
施術は麻酔薬や消毒薬を使って医師が行う。また、割礼を受けた
男性は「モラン(戦士)」と呼ばれるようになり、モランだけで
ひとつの集落を作って暮らすということをしていたが、昨今では
学校に通うため、そういった集落には参加しない男性が多数派で
ある。ラサロたちも二週間後には学校に通う日常へと戻っていく。
近代医療や学校によって割礼を取り巻く環境は変化しているが、
彼らが今日割礼を受ける意味は、きっと今も変わらず、私の想像
を超えて大きいのだろう。

まだ薄暗い張りつめた空気の中、ひっそりと、しかし厳粛に、
4人の少年たちはひとりずつ順番に割礼を受けた。彼らは思い思
いの表情を見学者である私に見せた。割礼を終えた彼らの顔つき
は皆一様にどこか自信にあふれ、大人っぽく見えた。

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このメールマガジンのバックナンバーは、こちらのページから
ご覧いただけます。
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■メルマガ写真館II ~フィールドで出会う~
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「村のフランスパン」.........今中亮介(アフリカ地域研究専攻)


写真は、パン屋の主人が出荷用のフランスパンを確認しているところです。
このあと横にいる少年がダンボールを担いで・・・

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(写真とエッセイの続きは上記HPでご覧いただけます)

↓「メルマガ写真館」バックナンバー
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■お知らせ
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□セミナー情報
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◆第19回 KUASS(Kyoto University African Studies Seminar)
日時:2013年11月1日(金) 15:00~17:00
セミナータイトル:
「生態的病虫害管理をめぐる対話:カメルーンと日本の経験から」
演題1:「カメルーンにおける生態的病虫害管理戦略と政策」
演者1:ノエ・ウォアン博士(カメルーン国立農業開発研究所・所長)
演題2:「日本における第3の道への模索:農生物多様性保全と持続的
農業生産の両立をめざして」
演者2:日鷹一雅 博士(愛媛大学大学院農学研究科・准教授)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
(地図:http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/access.html
※駐車場はご利用いただけません。
※講演は英語で行われます。

◆日本アフリカ学会・京都大学アフリカ地域研究資料センター共催
日本アフリカ学会創立50周年記念市民公開講座
第5回 2013年12月14日(土)
「急成長で岐路に立つアフリカ」
大林 稔(龍谷大学経済学部国際経済学科・教授(2013年3月まで))
時間:15:00~17:00
会場:京都大学稲盛財団記念館3階、大会議室
(地図:http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/access.html
受講料:無料
申し込み:不要
今後の予定・詳細情報:
http://african-studies.com/j/seminars/2013jaas50.html

◆第2回 京大アジア・アフリカセミナー「アフリカの現在(いま)」
日時:2013年11月1・8・15・22日(全4回)19:00~20:30
場所:キャンパスポート大阪
*参加にはWeb予約が必要です。
URL: http://kansai-seminar.com/courses/view/177
受講料:1回2,500円、4回10,000円

第1回 ケニアの観光と民族文化
中村香子(京都大学総合地域研究ユニット研究員)
第2回 タンザニア農民の暮らしと森と都市の新たな関係
近藤史  (ASAFAS助教)
第3回 カメルーンのキャッサバ栽培とビジネスチャンス
荒木茂  (ASAFAS教授)
第4回 エチオピアの在来資源を生かした開発の試み
重田眞義(ASAFAS教授)

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□頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム
アジア・アフリカの持続型生存基盤研究のためのグローバル研究
プラットフォーム構築 情報
 http://brain.cseas.kyoto-u.ac.jp/
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最新の派遣者の報告書をウェブサイトに掲載しました。下記URLから
ご覧いただけます。
◆2013年度派遣 若手研究者報告
金子守恵 「アジア・アフリカにおける持続型生存基盤の発展に寄与
するものつくり研究の可能性」
(1)http://brain.cseas.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2013/
06/kaneko2013_1.pdf

(2)http://brain.cseas.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2013/
06/kaneko2013_2.pdf

(3)http://brain.cseas.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2013/
06/kaneko2013_3.pdf


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□Kyoto Review of Southeast Asiaホームページ リニューアル
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“Kyoto Review of Southeast Asia”ホームページが新しくなりました。
URL: http://kyotoreview.org/

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□ドキュメンタリーフィルムの募集
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“CSEAS Sustainable Humanosphere Visual Documentary Project”
では、東南アジアの多元共生社会に関するドキュメンタリーフィルム
を募集しています。詳細情報は以下URLからご覧いただけます。
http://sea-sh.cseas.kyoto-u.ac.jp/visual-documentary-
project-2013/


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□その他のお知らせ
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2013年10月11日、「アジアにおける東南アジア研究コンソーシアム (SEASIA)」
が発足しました
URL: http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/2013/10/seasia20131003/

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□メールマガジンに対するご意見・ご感想お待ちしております。
http://form.mag2.com/gianoubima
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◆編集子より◆
9月下旬にアフリカから帰国すると、鴨川の河川敷が大変なことに
なっていた。9月15日にきた台風18号による豪雨で、歩道の上
まで濁流が流れたのである。四条から荒神橋まで歩いてみると、至
る所に「ああ、ここまで水が来ていたんだ」とわかる場所があった。
「賀茂河の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」と
言ったのは白河法皇だが、そんな昔からこの川は、しばしばこのよ
うに荒れ狂ってきた。流れのえぐり取った爪痕を見ると「これはか
なわん」と思う。かなわんから、それに対抗するのではなく受け流
してうまくつきあう方法を見つける方が賢い、それしかない、と実
感するのである。(DK)


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◆このメールマガジンは、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究
研究科(ASAFAS)広報委員会、ASAFASキャリア・ディベロップメント
室、学際融合教育研究推進センター・総合地域研究ユニット臨地教育
支援センターより発行しています。

◆ご意見・ご感想を以下フォームよりお気軽にお寄せください。
掲載希望の記事や研究会の案内なども受け付けています。
宛先:http://form.mag2.com/gianoubima

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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)
広報委員会
ASAFASキャリア・ディベロップメント室
京都大学学際融合教育研究推進センター・総合地域研究ユニット
臨地教育支援センター(IASU)
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/
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