「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」バックナンバー

メールマガジンバックナンバー 
■■■ September 2017 第171号 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
Integrated Area Studies INFOrmation Magazine(IAS-INFOM)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■【発行部数 1204】■■■



________今月号の目次_________________

□フィールド便り...............「東ネパールの甘いお酒、トゥンバ」
□メルマガ写真館..........「共存する祈り ―ヨルダンの夜景から―」
□お知らせ...........................地域研究用アプリLOCOPASなど
□講演会・セミナー情報....................アフリカ地域研究会など
□最近の出来事...........................FacebookとTwitterの情報
□編集子より
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■ フィールド便り
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「東ネパールの甘いお酒、トゥンバに魅せられた初めての調査」
高道 由子(グローバル地域研究専攻)
 
 普段、「お酒で何が1番好き?」と訊かれれば、「日本酒かマッコリ!」
と答える私ですが、実は1番好きなお酒は、調査地の東ネパールのお酒、
トゥンバです。トゥンバは、ネパール語でコドゥと呼ばれるヒエからで
きたお酒です。発酵させたヒエを金属製や木製のトゥンバ専用の容器に
入れて、そこにお湯を注いで、同じく金属製や木製のストローで飲むの
が一般的です。お湯を注いでから3分ほど待ってから飲むと、甘いトゥン
バが口いっぱいに広がります。甘さが足りないときは蜂蜜を入れて、甘
さを足したりもします。お湯を何回も足しているうちに、少しずつアル
コールも薄くなり、酔いも落ち着いていきます。東ネパールのヒレとい
う町では、町の入口に大きなトゥンバのモニュメントが建てられている
ほど、親しまれているお酒です。
 
 初めて調査に行った2015年、ネパールでは9月にインドとの国境が封鎖
され、燃料不足が深刻で、バスもまばらにしか走っていませんでした。
調査候補地のテーラトゥムへは、国際空港のあるカトマンドゥからバス
で15時間程度かかります。私はバスの代わりに、カトマンドゥから南東
の街ビラトナガルへ運行していた飛行機にとりあえず乗り、そこからは
知り合いの大学の先生が「途中の町へ向かうついでに」と私をバイクに
乗せていってくれました。ビラトナガルからテーラトゥムへは、山道を
北へ8時間ほど行かなければなりません。曲がりくねった道である上に、
標高差から気温がどんどん変わり、汗ばんだり凍えたり、大変だったの
を覚えています。加えてバイクにも乗り慣れておらず、重たいバックパ
ックにひっくり返されそうな私を見かねて、先生は途中の茶屋で頻繁に
休憩をしてくれました。
 

 そうした茶屋の一つで、昼間から若い女性たちが飲んでいたのが、こ
のトゥンバです。「お前も飲むか?」と大学の先生に言われましたが、
バイクの後ろで酔っぱらうと命取りになりかねないと思い、我慢しまし
た。その夜、途中の町バサンタプルにある先生の自宅に一泊させてもら
ったときに、トゥンバをご馳走して下さいました。初めて飲むトゥンバ
は、冷えた体に染み込むように、本当に甘くて、ほっとする優しい味で、
ぽかぽかした体で熟睡することができました。
 
 調査地のテーラトゥムでもトゥンバはよく飲まれています。私の調査
対象であるダカ織工房のお店は、8時前に開店し、夜の7時前に閉店する
のですが、リンブーの女性店主は、夕方4時過ぎになると織り手の娘に
トゥンバを店まで持ってきてもらい、こっそりと飲み始めます。いつも
とても厳しい店主も、トゥンバを飲み始めるとほろ酔いのせいかちょっ
とだけ大らかになり、よく話をしてくれます。私はこの時間を狙って、
いつも忙しい彼女に話を聞くようにしていました。
 
 店番が終わり工房に戻ると、トゥンバを飲みながら食事の準備を手伝
います。料理ができない私は、基本的に皮むきです。店主の姪と一緒に
皮をむいていると、色んな人が私のトゥンバの蓋を開けて「まだある?」
と確かめてきます。ないときはお湯を注ぎ足してくれます。時々、「今
日はいらない」と断ると心配されます。「ちょっと疲れているだけ」と
いうと、「トゥンバを飲めば治るよ!」と笑いながら、どんっと目の前
に置かれます。
 
 店主の家には、織り手のまだ2歳くらいの小さな娘が、よくご飯を食べ
にやってきていました。店主は時々、最後の方の薄まったトゥンバを、
その2歳の子にもあげるのです。小さな彼女もすぐにトゥンバの虜になり、
いつもぐいっと飲んでは「もっとちょうだい!」と言わんばかりに小さ
な容器を店主の方に差し出すので、みんな笑い転げます。トゥンバは4回
ぐらいお湯を注ぎ足すと、味がほとんどなくなって終わりみたいですが、
私はいつも2回ぐらいしか飲めません。すると織り手の娘が、お湯を足し
て残りのトゥンバを飲みます。
 
 店主がいない日は、織り手や店主の姪と一緒にでトゥンバやロキシー
(同じくヒエからつくった蒸留酒)を飲んで、インドのテレビドラマを
一緒に見たり、流行りの音楽を鳴らして踊ったり、スマホで写真や動画
を撮り合ったり、とても陽気で賑やかでした。初めての調査で緊張気味
の毎日でしたが、仕事終わりのトゥンバによって、店主や家族、織り手
と近づくことができ、一日一日を幸せな気分で締めくくることができま
した。
 
 
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■ メルマガ写真館 ~フィールドで出会う~
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「共存する祈り ―ヨルダンの夜景から―」
池端 蕗子(グローバル地域研究専攻)
 
 ヨルダンは、パレスチナ、シリア、イラクといった動乱する国々と国
境を接しながら、国内の平和を保っている小さな国です。2016年夏、私
はヨルダンの首都アンマンから・・・・
 
(続きは次のURLをご覧ください)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/mm/2017_09.html
 
 

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■ お知らせ
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□ 2018年度 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 入試日程
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*募集要項等の詳細は下記の研究科ウェブサイトで公開しています。

◆ 第2回入学試験
(東南アジア地域研究専攻・アフリカ地域研究専攻のみ)
出願期間:2018年1月15日(月)~1月23日(火)17時必着
試験日程:2018年2月7日(水)、8日(木)
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/admissions/application

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地域研究用アプリLOCOPAS(最新版:iOS、Android対応)の紹介
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 フィールドワークや防災に役立つスマートフォンアプリLOCOPAS
(Location × Comment × Photo for Area Studies)を大幅アップデー
トし、MAP表示機能を追加し、日本語・英語・インドネシア語でAndroid
とiOSに対応するようになりました。
 
 LOCOPASを使って写真を撮影すると、撮影位置(緯度・経度)と時間情
報をコメントと一緒に保存して、単一のファイルに記録することができま
す。フィールドワーク中の記録に便利です。MAP表示で位置を簡単に確認
できます。専門家向けには、地理情報研究用GPX形式でも出力可能です。
また、災害害時や緊急事態には「いつ・どこで・どうして」助けが必要か
を簡単にまとめてSNSで広範囲に発信できます。ぜひご活用ください。
 
[Android版ダウンロード:Google Play]
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.entaworks.locopas
 
[iOS版ダウンロード:AppStore]
https://itunes.apple.com/jp/app/locopas/id1264422250

 LOCOPASは、発展途上国における災害情報を収集・集積することをそも
そもの目的として、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、同
大学防災研究所、同大学宇宙総合学研究ユニット、そしてアプリ制作会社
京都エンタテイメントワークスの共同作業により開発されました。
 
 開発者:古澤拓郎(代表)・杉島敬志・岩田明久・畑山満則・樋本隆太
(以上京都大学)、リクソンシブリアン(北スマトラ大学)、上野和孝・
杉山大介・園木良太(京都エンタテイメントワークス)
 
 本アプリは日本学術振興会(JSPS)『課題設定による先導的人文・社会
科学研究推進事業』(領域開拓プログラム)「情報メディア発展のもとで
の新しい地域研究」事業の「地域社会の災害レジリエンス強化に向けて―
SNSとクラウドGISを用いた共時空間型地域研究」(業務主任者:古澤拓郎)
の一環として開発されました。

 
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■ 講演会・セミナー情報
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 □ 第229回 アフリカ地域研究会
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日時:2017年 10月 19日(木) 15:00~17:00
会場:京都大学 稲盛財団記念館 3階 中会議室
演者:遠藤聡子(内閣府大臣官房企画調整課野口英世アフリカ賞担当室・主査)
演題:パーニュの文化誌:現代西アフリカ女性の衣服の成立と普及
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/as/index.html
  
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□ 京都大学アフリカ地域研究資料センター
公開講座「アフリカから学ぶこと:アフリカ潜在力」
(要事前申込・受講料 1講座1000円,5講座4000円)
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京都大学では2011年から「アフリカ潜在力」プロジェクトを立ち上げ、
アフリカに生きる人びとがみずから創造し使い続けてきた知識や制度
(=潜在力)のありさまを解明して、それを人びとの和解や社会の修復
のために活用する道を探究してきました。今回のアフリカセンター公開
講座「アフリカから学ぶこと」は、この「アフリカ潜在力」を取り上げ
ます。2016年に開始した後継プロジェクトのメンバーがアフリカ潜在力
について実例を交えてわかりやすく語ります。
 
◆ 第1回 2017年10月21日(土)
「アフリカの潜在力が現代世界を救う」
 松田素二(京都大学大学院文学研究科・教授)
 
◆ 第2回 2017年11月18日(土)
「自然保護と人びとの潜在力:畏れる力となにもしない力」
 山越言(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)
 
◆ 第3回 2017年12月16日(土)
「都市に生きる人びとの潜在力:カメルーンの小さな仕事から見えてくるもの」
 平野美佐(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)
 
◆ 第4回 2018年  1月20日(土)
「社会変化のなかでの潜在力:アフリカで忠誠心を考える」
 大山修一(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)
 
◆ 第5回 2018年  2月17日(土)
「アフリカ潜在力:他者とのつきあい方をアフリカ人に学ぶ」
 太田至(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授)

いずれの回も、
時間:15:00~17:00(開場 14:30)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
定員:50名(8月頃より受付開始)
*問い合わせ先や詳細は以下のURLをご参照ください。
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/contribution/kokaikoza2017.html
 
 
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(ツイートをブログ形式で表示)
 
 
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■ 編集子より
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 調査先で、土地のお酒に魅せられる人は少なくないかもしれません。
私も時々ふるまわれるお酒(ココナツの蒸留酒)を楽しみにしていまし
た。先日、調査先で長年お世話になっていたホームステイ先のおじいさ
んを囲んでの宴がありました。最近はベッドで過ごすことが多くなって
いましたが、この日はお酒を嗜みながら、みなの歌声に合いの手をいれ
る彼の声が高く響いて、記憶に残る夜となりました。
 
 今年はいつにも増して、調査先での健康・安全管理の重要さを感じた
夏でした。アジア・アフリカ諸国への渡航に関しては蓄積のあるASAFAS
ですが、今後も情報の共有・アップデートを徹底していこうと思います。
(SN)

 
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研究科(ASAFAS)広報委員会、ASAFASキャリア・ディベロップメント室、
ASAFAS臨地教育・国際連携支援室より発行しています。

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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)
広報委員会
ASAFASキャリア・ディベロップメント室
京都大学 アジア・アフリカ地域研究研究科 次世代型アジア・アフリカ
教育研究センター 臨地教育・国際連携支援室
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/
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