京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科:インターネット講座
ASAFAS 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
インターネット連続講座
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  第十一回 「東南アジアという世界」
東南アジア地域研究専攻 坪内良博(地域進化論講座)     tsubouchi@asafas.kyoto-u.ac.jp
 
 

2.類似のなかの異質
(1)都市の構造


 都市にはさまざまな人々が集まっている。職業も収入も宗教や考え方もさまざまである。この意味では世界の都市は共通項を有している。日本の都市と比べた場合、東南アジアの都市の特徴は、その多民族性にある。
 タイ国の首都バンコクをとりあげよう。バンコクの歴史は1782年の建設以来200年あま りに過ぎない。いきなり人口数百万の大都市ができたわけではない。少し古い時代のバンコクの人口は、あまり分かっていないがここに面白い数字がある。首都建設から半世紀近くを経過した1828年の時点で、総人口が約40万人ないし41万人とされ、その内31万人ないし36万人が華人(中国人)とされるのである。すなわち、少なく見積もっても77パーセント、多ければ88パーセントが華人ということになる。この数値に対して、ある著名な研究者は、華人の数字が一桁まちがって記載されたのだろうといい、また、ほとんど同時代の旅行者は、35万人という華人が、バンコクの華人の人口ではなく、タイ国全土に居住する華人の総数であるという見解を紹介している。要するに、バンコクの人口も、華人の割合も、ここでは確かではないのだが、これらの数字が堂々と公表されるところに、人口把握に関するおおらかさと、華人の占める割合の大きさが伺われるというものである。ちなみに、ある資料では、この時代のバンコクにおけるタイ人(シャム人)は僅か8000人である。そしてバンコクは、華人やタイ人の他に、コーチシナ人、カンボジア人、ペグー人、ラオス人、ビルマ人、タボイ人、マレー人等を含む多民族社会であった。

この地域には多数の小王国が林立していた。

残された宮殿の一つ。

Contents

1、アジアの中の東南アジア
  多様な側面

  異質の要素

2、類似のなかの異質
2-1、都市の構造
   多民族的構造
2-2、移動性
   出稼ぎ
   焼畑

3、小人口世界

4、東南アジア型社会
   農民と移動
   異質への親和性

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