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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第二十一回 「開発現象と地域研究」
 
 

Contents

1.村の「伝統」としての開発

2.開発現象の複雑さ

3.地域研究としての開発現象研究

4.人、言葉、モノのネットワークとは
  どのようなものの見方か

5.開発現象―人、言葉、モノからなる
  ネットワーク

  

2.開発現象の複雑さ

 しかし、開発現象の広がりとその複雑な絡み合いは、これまでの社会学や人類学の村落調査のみで理解できるものではない。というのも、開発現象を十全に理解するためには、村落から遙か離れた国際機関や、政府、非政府組織などにおいて展開する開発政策の策定過程、そしてそれを取り巻く諸状況も十分理解する必要があるからである。もちろん、これまでも開発政策の策定とそのマクロ・レベルの帰結に関しては、開発経済学、開発行政学、開発社会学/人類学、国際保健学といった視点から山ほど研究がなされてきている。しかし、それらの研究は、複雑な開発現象を具体的な開発過程の把握にもとづいて論じたものというよりは、具体的な開発過程をブラックボックスにおいたうえで、統計的もしくは理論的・規範的に論じたものがほとんどで、そこでは開発現象というものが生き生きと見えていない。そのため、開発現象というものを、援助機関から村落に至るまでのさまざまな局面を対象に、それらの相互連関を総合的に把握する新しい枠組みの構築が必要とされている。

写真2 スリランカの中心都市コロンボ。