South Asia and Indian Ocean Studies Seminar

第14回研究会

主催:総合地球環境学研究所、メガ都市プロジェクト 代表:村松伸
共催:「南アジア・インド洋世界研究会」(http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/WS/sa-io/)

第8回全球都市全史研究会
南アジアのメガ都市研究(2) デリー

2011年10月9日(日)
総合研究2号館4階第一講義室(AA401室)
京都市左京区吉田本町 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
URL: http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/about/access.html


プログラム

講演113:00-13:40
山根周(滋賀県立大学人間文化学部)
「デリー旧市街の街区空間の構成(仮題)」
講演213:40:14:20
由井義通(広島大学大学院教育学研究科)
「デリー首都圏地域の開発-グルガオンとノイダの事例-」
討論14:20-15:00
休憩5:00-15:20
講演315:20-16:00
木下彰子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「デリーにおけるヤムナー河汚染問題とヒンドゥー教宗教実践の変容」
講演416:00-16:40
中谷哲弥(奈良県立大学地域創造学部)
「インド・デリーにおける近隣関係の構築と都市化・再開発
 -東パキスタン避難民コロニーを事例として-」
講演516:40-17:20
山田協太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「日常生活・宗教施設・カーストから南アジアの都市と都市システムを考える:インド洋の集散港コロンボの都市空間変容の5世紀」
討論17:20-18:00


講演概要

由井義通(広島大学大学院教育学研究科)
「デリー首都圏地域の開発-グルガオンとノイダの事例-」

  巨大な雇用の磁石となったデリーは,大都市化をコントロールする必要から,1959年に DDA(Delhi Development Authority)を設立し,1962年に最初のマスタープランが出され た。しかし,当初の案を上回るペースで都市化が進み,デリーの成長をデリーだけでコン トロールするのは困難となったため,NCRPB(National Capital Region Planning Board)が 1985年に設立され,デリー周辺地域を含めた大都市圏で人口や産業の分散をはかるように なった。1988年にNCRPBによるマスタープランが発表されたが,この計画ではデリーの開 発規制を継続し,デリー周辺に6つのDMA(Delhi Metropolitan Area)タウンを開発し,開 発の受け皿を創出して,機能分散を図っている。


木下彰子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「デリーにおけるヤムナー河汚染問題とヒンドゥー教宗教実践の変容」

 デリーはインフラ整備が十分に進まないなか、急激な人口流入や工業化、都市化を経験し、深刻な環境問題を抱えている。特にデリー東部を流れるヤムナー河の水質悪化は喫緊の問題になっている。そして、この聖なるヤムナー河の汚染問題は、そこで行われてきたヒンドゥー教徒の宗教実践にも影響を与えるようになった。ヒンドゥー教の日々の礼拝では、寺院でも家庭でも、花やココナッツ等様々なものが献じられている。そして一度献上されたこれらの供物は、「ゴミ」として捨てられることはなく、聖なる河に流されるのが理想とされており、デリーでは主にヤムナー河で毎日大量に「破棄」されている。また、ドゥルガープージャーなどの祭礼では、最終日に祭礼用の巨大な神像をヤムナー河に沈(鎮)める。近年、このように「破棄」される供物や神像が 河川環境を著しく悪化させているとして、メディアでも対策を求める報道が増えている。本発表では、デリーにおけるヤムナー河汚染問題をめぐる、政府の対応やNGOの活動を報告すると共に、環境問題を考慮して、人々が家庭内の宗教実践を変え始めている様子にも焦点をあて、都市の環境問題と宗教実践のあり方について考察する。


中谷哲弥(奈良県立大学地域創造学部)
「インド・デリーにおける近隣関係の構築と都市化・再開発
 -東パキスタン避難民コロニーを事例として-」

 インドの首都デリーにおいて1970年代初頭に建設された東パキスタンからの避難民コロニーを事例として、インドで進む都市化、コマーシャリズム、再開発などの影響下において、いかに近隣関係が構築されてきたのか、その一端について主に次の2つの側面から明らかにする。ひとつは、ヒンドゥー教のドゥルガ・プジャという年祭礼を取り上げて、宅地の拡大とともに祭礼が大規模化しコマーシャリズムと結びつく一方で、親密さを求めて再分裂する過程を示すことで、住民たちの近隣関係意識のあり方を提示する。もうひとつは、土地価格の上昇やマーケットの再開発により、結果として東パキスタン出身者の住民や事業者の流出が生じていることから、コロニーにおけるエスニックな構成が変動していることを指摘する。


山田協太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「日常生活・宗教施設・カーストから南アジアの都市と都市システムを考える
:インド洋の集散港コロンボの都市空間変容の5世紀」

 人々の日常生活を出発点とし、その延長上に南アジアのメガ都市の様態と動態を捉える視座の構築を試みる。考察の焦点は、インド洋の中央に位置することから歴史的に重要な集散港であるとともに、南アジアの経験した植民地化の重層的歴史を共有するスリランカの植民都市コロンボである。
 日常の活動とその焦点となる寺院、モスク、教会などの宗教施設、および宗教施設を凝集点として成立するカースト集団を基本的視点とする。それらの都市空間上での連環を記述するとともに、周辺地域・海域(セイロン島およびマナール湾)における連環から、環インド洋の都市や地域との連環へ視野を拡げつつ、ヨーロッパとの接触開始以来のその5世紀にわたる展開を記述することをつうじて、南アジアにおける都市と都市ネットワークの姿を描き出したい。

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