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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第十六回 「食糧生産と環境保全」
 
 

Contents

1.MAPNETプロジェクト

2.地域研究のアプローチ

3.東北タイとの関わり

4.ムラ研究の楽しさともどかしさ

5.「地べたを這いずり回る」と「鳥瞰する」

6.大学院生との共同研究

7.数値データで地域を語る

8.地域と地球

  

2.地域研究のアプローチ

 普通に考えると、これは農学を専門とする人の課題です。最近は、人工衛星画像を主たる情報源とするリモートセンシングの分野でも、環境モニタリングや農業生産力評価に関する研究が急速に進展しています。そんななかで、地域研究はどんな貢献ができるのでしょうか。このような問いかけは、地域研究を志す人の心に常にひっかかっているでしょうし、でもそれがどこかで研究意欲や活力の源となっていることも確かです。

 私は、このプロジェクトを始めるにあたって次のように考えました。潜在的な土地生産力というのは、純粋に理論的には、その土地のもつ地形や土壌、気象条件などの自然環境と作物や品種などの農業技術で決まるものです。しかし21世紀に向けて私たちが直面している環境破壊や食糧不足などの問題は、本質的に、もっと人間臭いことに起因しているに違いないと思うのです。ある農家が、その人の経営する農地で、何をどのような方法で生産するかには、本当に複雑な背景があります。農家経営レベルでのお金や労働力の配分の問題かもしれません。あるいは地方レベルの商業ネットワークや農耕文化なども関わってくるでしょう。さらに国レベルのマクロな経済政策や森林保全政策ももちろん影響しています。生産力を規定するこのような要因を含めて食糧生産と環境保全を考えていくことが必要だと思ったわけです。

天水田の移植風景。6月になって雨が降り始めると苗代の用意を始める。7月になってまとまった雨が降ると本田に移植する。しかし雨は気まぐれである。いつまとまった雨が降るのかは経験ある農民にさえ正確には予測できない。9月上旬まで移植を待たなければならない年もある。そうなれば、十分な本田養生期間が確保できないために、コメの収量は極端に小さくなる。