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第6回(通算第31回)
「インドネシアはなぜ政治的に不安定なのか」
白石隆:東南アジア地域論講座

Contents

なにが問題なのか

1、なぜ行き詰まったのか−政治制度

2、なぜ行き詰まったのか−政権の運営

3、なぜ行き詰まったのか−政治的妥協と非常事態宣言の問題

4、新政権は安定するのか

5、なぜ政治社会秩序は不安定なのか

6、なぜ家族主義システムは崩壊したのか

7、インドネシアの危機をどう考えるか

4新政権は安定するのか

 ではメガワティ新政権はどうなりそうか。
 結論的に言えば、政権はいまよりはるかに安定するだろう。
 議会においてメガワティの民主党闘争派は一五三議席を占める。ゴルカル党(一二〇議席)は次の総選挙が予定される二〇〇四年まではメガワティ支持、民主党闘争派との協力をすでに表明しており、国軍・警察会派(三八議席)のメガワティ支持も確実である。アミン・ライス国民協議会議長がどう策動しようと、この三派によって三一一議席を占め、新政権は国会において安定多数を確保できる。
 また国軍のメガワティ支持も確実である。これは基本的には、メガワティがインドネシア共和国の統一を重視して、地方自治の拡大に反対であること、アチェ、イリアンジャヤの分離独立運動のような問題についてアブドゥルラフマン・ワヒッド大統領の「対話」路線より国軍の主張する「軍事」路線に近いこと、そしてインドネシア共和国の統一のために国軍は不可欠の存在であって、過去の人権侵害問題などの事実究明、国軍人事への介入などは望ましくないとの立場をとっていることによる。