ASAFAS 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
インターネット連続講座
-----------------
 

第十三回 「〈多神教〉的イスラームと〈一神教〉的イスラーム」

東南アジア地域研究専攻(南・西アジア地域研究)
東長靖(連環地域論講座)tonaga@asafas.kyoto-u.ac.jp

 
 

4.「多神教」的イスラーム
4-2 誰に願いを?

 世界のあらゆる事柄は、細大漏らさず、アッラーの決定・予定に従うというのが、イスラームの基本的立場である。
 しかし、イスラーム世界では、特定の「聖者」に、あるいは特定の「聖地」で、祈りを捧げる姿がしばしば見られる。写真は、トルコ・イスタンブル郊外にあるエユップ・スルタン廟の中庭にある「聖木」に祈りを捧げる人々。
 このような現象はイスラーム世界に広く見られるが、これもアッラー以外のものに願掛けをするのはけしからんという理由で、「一神教」の立場から批判を受けてきた。
 しかし実際には、今日ですら、このような慣行は生き残っている。前近代には、聖者に取りなしを頼むことは、「正しいイスラーム」の伝統なのであって、これを批判する側こそ間違っている、という論文が数多く書かれている。

エユップ・スルタン廟中庭

(トルコ・イスタンブル)

Contents


1.雪をかぶるモスク

2.知の伝統とイスラーム世界

3.アッサラーム・ナヴルーズ

4.「多神教」的イスラーム

4-1 アッラーを超える存在?

4-2 誰に願いを?

5.「一神教」的イスラーム

5-1 男女隔離

5-2 メッカは「イスラームのメッカ」か?

6.「正しい」イスラーム

6-1 偶像禁止

6-2 国王も聖者信仰

*
インターネット
連続講座