ASAFAS 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
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第十三回 「〈多神教〉的イスラームと〈一神教〉的イスラーム」

東南アジア地域研究専攻(南・西アジア地域研究)
東長靖(連環地域論講座)tonaga@asafas.kyoto-u.ac.jp

 
 

5.「一神教」的イスラーム
5-1 男女隔離

 おそらくほとんどすべての一神教に、上に述べたような「多神教」的要素は内包されるのであろう。それに対する批判と、「純化」の主張もまた。
 イスラームにおいて、このような批判は、近現代に特徴的なものであるといってよい。前近代にこのような批判がなかったといえば史実に反するが、少なくともそういう潮流がイスラームの主流となることはなかったといってよいだろう。
 4-1で取り上げた神秘主義哲学者イブン・アラビーは、その後霊験あらたかな「聖者」として奉られ、人々は彼の廟に願掛けに訪れるようになった。1998年にその廟を訪れた私は、10年前にはなかったあるものを目にして驚いた。
 それは、男女の礼拝場所を隔離するカーテンである。老若男女を問わず、人々が祈りに訪れる場所であった聖者廟にまで、「イスラム原理主義」の波は押し寄せていたのであった。

男女の礼拝場所を隔離するカーテン

(イブン・アラビー廟、シリア・ダマスクス)

Contents


1.雪をかぶるモスク

2.知の伝統とイスラーム世界

3.アッサラーム・ナヴルーズ

4.「多神教」的イスラーム

4-1 アッラーを超える存在?

4-2 誰に願いを?

5.「一神教」的イスラーム

5-1 男女隔離

5-2 メッカは「イスラームのメッカ」か?

6.「正しい」イスラーム

6-1 偶像禁止

6-2 国王も聖者信仰

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