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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第十八回 「経済発展の要因としての制度」
 
 

Contents

1.制度が経済パフォーマンスを決める

2.制度とはなにか

3.制度の経済パフォーマンスへの影響ルート

4.経済的自由とルールの執行能力

5.なにが制度を決めるのか:
 タイとフィリピンにおける自由度の比較

6.なにが制度を決めるのか:
 タイとフィリピンにおけるルール執行能力の比較

7.私の研究がめざすもの

  

7.私の研究がめざすもの

 世界で貧しい国と豊かな国が現在共存しているが、東南アジアはある意味でその縮図である。第2図に示されているように、シンガポールのような所得水準の高い国もあれば、ミャンマー、カンボジアなどの貧しい国もある。1998年現在、シンガポールとブルーネイが最も高い所得グループ(平均所得22,810ドル)、マレーシア、タイが第二グループ(平均所得6,415ドル)、フィリピン、インドネシアが第三グループ(平均所得3,165ドル)、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーが第四グループ(平均所得1,375ドル)、つまり最貧国グループを形成している。第一グループと第四グループの間には大きな所得格差がある(前者は後者の約17倍)。

図2 1998年の一人あたり国民総生産
購買力平価(ドル)


 1950年代の初め、多くの国が独立した時点で、所得格差はせいぜい3倍くらいではなかったかと思われる。それが1960年代を境にして、拡大して行った。その主たる説明要因として制度をとり、それで過去半世紀の経済格差拡大を説明することが現在私の取り組んでいる研究テーマである。まだ不明な点も多いが、整理のある程度ついたことについては発表してきた。その主たるものは以下の通りであるが、制度と経済発展の関係に興味のある方は参考にされたい。

英文
1. Asia per Capita: Why National Incomes Differ in East Asia, London: Curzon Press, 2000.
2. The Nation and Economic Growth: Korea and Thailand, Kyoto: Kyoto University Press, 1999.
3. The Nation and Economic Growth: the Philippines and Thailand, Kuala Lumpur: Oxford University Press, 1994.

和文
1. 「東南アジアで良くなる国、悪くなる国」、東洋経済新報社、1999年
2. 「なにが経済格差を生むのか」、NTT出版、1999年