<< 東南アジア地域研究専攻 2001年度目次へ戻る

第9回(通算第34回)
「イスラームの制度化と正統性観の変化:マレーシア、サバ州の事例」
長津一史:地域進化論講座

Contents

1.はじめに

2.マレーシアにおけるイスラームと国家

3.イスラームの制度化(1)行政

4.イスラームの制度化(2)教育

5.センポルナ郡におけるイスラームの正統性観

6.知的権威の移行:スルーからマレーへ

7.公的機関という権威

8.制度化とムスリム社会のダイナミズム

イスラームの制度化(2)教育


 サバ州でイスラーム教育が本格的に進展するのは、MUISが設立された1971年以降のことである。独立後の半島部では、州の宗教評議会が近代的なイスラーム学校を建設、運営するようになった。これにならって、サバ州でもMUISの管理下に公的なイスラーム学校がつくられていった。カリキュラムやテクストも半島部のものがサバ州に導入された。現在イスラーム学校はJHEAINSの管理下にある。その数は132校になっている。
 サバ州におけるイスラーム教育の制度化で注目しておきたいのは、それがマレー化を伴っていたことである。半島部のムスリムの大多数はマレー人であり、その母語はマレー語ある。マレー語はマレーシアの国語である。しかしサバ州のムスリム、特に東海岸のムスリムの多くはマレー人ではないし、かれらの母語もマレー語ではない。だが、国立の一般学校同様に、イスラーム学校でも教育言語にはマレー語が用いられた。テクストもマレー語で書かれている。また初期の教員の多くは、半島部のマレー人がリクルートされてきた(ただし、現在ではサバ州出身の教員も増えている)。イスラーム教育において、人、言語、テクストがマレー化されたわけだ。


公的イスラーム学校


授業の様子.ウスタズと児童