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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

 

第十七回 「イスラーム世界研究の新地平
       ― スーフィズム・タリーカ研究―」

東長 靖(とうなが やすし)   東南アジア地域研究専攻(連環地域論講座)

 
 

Contents

1.スーフィズムとタリーカ

2.イスラームの2つのベクトル

3.倫理の学としてのスーフィズム

4.鍋は急いで洗え

5.ウンマの再現としてのタリーカ

6.「大ジハード」と「小ジハード」

7.ゴルバチョフへの書簡

  

1.スーフィズムとタリーカ

 イスラーム世界では、理念においても現実社会においても、スーフィズムとタリーカが大きな存在となっています。それは、現地に親しんでフィールドワークを行った人には、すぐ分かることです。たとえば、ソ連崩壊後の中央アジア諸国で起こっている「イスラーム運動」の主な担い手は、スーフィズムであり、タリーカなのです。スーフィズムは一般に「イスラーム神秘主義」、タリーカは「スーフィー教団」と呼ばれます。

 イスラームの歴史を勉強する人も、たいていはどこかでスーフィズムやタリーカに出くわすものです。また、南アジアや東南アジア、アフリカなど、比較的遅い時期にイスラームを受容した地域では、まずスーフィズムやタリーカが入り、法学が本格的に研究・施行されるのはその後、ということが多かったのです。

 スーフィズムやタリーカを無視して、イスラーム世界・イスラーム諸地域の全体的把握をすることは不可能だと言っても過言ではありません。

ウズベキスタンのホジャ・アフラール学院。

この伝統ある学院の復興は、中央アジアにおけるイスラーム復興の一つの象徴といえます。