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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第十七回 「イスラーム世界研究の新地平
       ― スーフィズム・タリーカ研究―」
 
 

Contents

1.スーフィズムとタリーカ

2.イスラームの2つのベクトル

3.倫理の学としてのスーフィズム

4.鍋は急いで洗え

5.ウンマの再現としてのタリーカ

6.「大ジハード」と「小ジハード」

7.ゴルバチョフへの書簡

  

5.ウンマの再現としてのタリーカ

 イスラームが共同体思想を根幹に持っていることは、「2.イスラームの2つのベクトル」でお話ししました。この共同体は、ウンマと呼ばれます。それは、ムハンマドの在世中に、彼のまわりに形成され、その後の歴史の中で拡大していきました。

 しかし、13世紀のモンゴルの侵入と、これに伴うアッバース朝カリフの殺害・カリフ位の断絶という事態は、ウンマの危機をもたらしました。人々がウンマの実在を実感しにくくなっていったことは、想像に難くありません。

 こうした状況に呼応するかのように、スーフィーたちの共同体が生まれてきます。それが、タリーカです。内的世界に到達するための修行を行う場としての「スーフィー教団」のことをさしています。

 タリーカはウンマ崩壊後のウンマの再現であり、原初のウンマの後代における現前なのだと考えることができます。

リファーイー教団の修行(エジプト・カイロ)

タリーカのメンバーは、一同に会して修行をすることで、共同体意識を高め合います。