<< 東南アジア地域研究専攻 2000年度目次へ戻る

2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第十七回 「イスラーム世界研究の新地平
       ― スーフィズム・タリーカ研究―」
 
 

Contents

1.スーフィズムとタリーカ

2.イスラームの2つのベクトル

3.倫理の学としてのスーフィズム

4.鍋は急いで洗え

5.ウンマの再現としてのタリーカ

6.「大ジハード」と「小ジハード」

7.ゴルバチョフへの書簡

  

2.イスラームの2つのベクトル

 イスラームには、心の中へ、内へと向かうベクトルと、社会へ、外へと向かうベクトルの二つがあります。イスラームは、一方で内面的信仰に依拠していますが、他方では共同体思想を根幹に持っているためです。

 イスラームの理念において、外を目指すベクトルを体現するのが法学だとすると、内を目指すベクトルを体現しているのがスーフィズムです。

 スーフィズムは、「イスラームとイスラーム世界を存立させている内的原理の探求とその発露」ということができます。それは外的原理を追求し、実践する法学とともに、イスラームの根幹をなすものです。法学とスーフィズムはイスラームを支える二つの核といっても過言ではありません。

バルクーク・マドラサおよびハーンカー(エジプト・カイロ)

マドラサは法学・神学などを教える学院。ハーンカーはスーフィズムの修道場です。このように、法学とスーフィズムを学ぶ場がコンプレックスをなしている例は少なくありませんでした。