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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第十七回 「イスラーム世界研究の新地平
       ― スーフィズム・タリーカ研究―」
 
 

Contents

1.スーフィズムとタリーカ

2.イスラームの2つのベクトル

3.倫理の学としてのスーフィズム

4.鍋は急いで洗え

5.ウンマの再現としてのタリーカ

6.「大ジハード」と「小ジハード」

7.ゴルバチョフへの書簡

  

6.「大ジハード」と「小ジハード」

 近現代になってヨーロッパ列強がイスラーム世界に侵入してきたとき、ムスリムたちの先頭に立って反植民地闘争を中心となって担ったのが、教団としてのタリーカでした。彼らは、これをジハードと呼びました。日本で「聖戦」と訳されるこのジハードはしかし、実は小さなジハードに過ぎないのです。

 ムハンマドは、こういう外敵よりも、自分の心の方がより御しにくいものであり、これと戦うことこそ、より大きなジハードだと言っています。スーフィズムは、この大ジハードを実践し続けてきたのだといえましょう。

 ここで気をつけていただきたいのは、小ジハードが外に向かっての戦いであるのに対して、大ジハードが内に向かっての戦いであるのみならず、この二つのジハードは相似形で呼応関係にあることです。心へのジハードを説くスーフィズムと、武器をとって闘ったタリーカを、切り離して考えることはできません。

ハッジ・ベクターシー教団の武具類(トルコ)

かつては実際に使っていたものでしょう。今では、博物館の中に飾られています。