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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第十九回 「AA 研究科をフィールドワークする」
 
 

Contents

1.AA 研究科?

2.経典仏教と実践仏教

3.裸の王様

4.アリとキリギリス

5.昆虫図鑑

6.それぞれのオート・クチュール

7.専攻のこと、講座のこと

8.ドラゴン・クウェスト

9.鏡よ鏡

10.侃々諤々

11.一期一会

  

2.経典仏教と実践仏教

 宗教の研究には、大きく分けると二つのアプローチがある。ひとつは経典の研究を重視するもので、東南アジア大陸部の上座仏教を例にとれば、三蔵経(経蔵、律蔵、論蔵)の研究をつうじて、上座仏教のなんたるかを理解しようとする。もうひとつは、人々が日々の生活のなかで実践している宗教行動に関心を向けるもので、上座仏教についていえば、来世でのよりよき生まれ変わりを願って現世で徳を積む行為や、護符をめぐる信仰について研究することになる。二つのアプローチは対立するものではない。経典と実践は、たとえ100%ではなくとも、お互い相関しているのだから。二つのアプローチが相補完することによって、わたしたちの宗教理解を豊かなものにしてくれる。

 AA 研究科にも、経典というにはあまりにも大袈裟だが、文字化された紹介冊子が存在する。学生募集要項や研究科案内、そして冒頭のカラー・パンフレットである。「経典」の語る研究科と実践されている研究科、宗教がそうであるように、二つは必ずしも綺麗に重なるわけではない。これまでの二年半にわたって実践されている研究科について、わたしなりに、教育のフィールドワークへの参与者として、この間の印象を述べてみたい。

南タイでみかけた大仏、1997年。
鎌倉の大仏とはだいぶ趣が異なる。