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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第十九回 「AA 研究科をフィールドワークする」
 
 

Contents

1.AA 研究科?

2.経典仏教と実践仏教

3.裸の王様

4.アリとキリギリス

5.昆虫図鑑

6.それぞれのオート・クチュール

7.専攻のこと、講座のこと

8.ドラゴン・クウェスト

9.鏡よ鏡

10.侃々諤々

11.一期一会

  

9.鏡よ鏡

 学問とは、きわめて人間的な営みだ。学者といえども、寝食を忘れるということはなく、飯を食い、疲れもし、理性を失うこともある、といったレベルだけのことではない。研究者の性格と研究テーマ、アプローチとの間にはしばしば共鳴関係が存在する、それもしっくりした共鳴関係があるほど、端で見ていても心地よい研究成果が認められるようだ、ということである。また、人間の営みゆえ、学問にも服装のようにファッションがある、ということでもある。いくら最新流行のファッションでも、似合わない人には似合わない。いってみれば、人それぞれに似合いの研究というものがある。個人的経験では、このあたりの事情を理解せず、不似合いな研究テーマとのデュエットにこだわり続ける院生が存外と多い。

 アインシュタイン以外は学者になれないとしたら、われわれは全員、絶望するより仕方がない。アリでも、キリギリスでも、発想力、心構え、そして巡り合わせ次第では魅力的な研究者となれるのが、コンピューターの営みではない、人間的な営みとしての学問である。この学問に参加するには、まず己をよく知るよう努める必要がある。白雪姫の魔女は、鏡よ鏡と、鏡の精に尋ねることができたが、魔女でもアインシュタインでもないわれわれには、自助努力以外の術がない。己の知的・性格的長所と短所はなにか、人に劣り、人に優れているところはなにか。長所を伸ばし、短所を克服する、当たり前かつ困難な自己省察・自己調律・自己変革の繰り返しと試行錯誤から、わが身を素材に、自分に合った学問を手作りしていく端緒が生まれよう。

クルアーン読誦法のお披露目式で自分の出番を待つ子供たち、眼鏡はアクセサリーのひとつ、コトダラム村にて、1999年。