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2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第二十四回 「地域の「履歴」を読む−クミリを例に」
 
 

Contents

1.「空間の履歴」

2.土地利用変化を読む

3.熱帯の油料作物

4.クミリという有用樹種

5.クミリの利用

6.クミリの栽培奨励

7.クミリからみた地域の「履歴」

8.地域の「履歴」を綴る

  

1.「空間の履歴」

 深い感銘を受けた本があります。『西行の風景』(桑子敏雄著、NHKブックス、1999年)という本です。著者の桑子さんは、その本のなかで「身体の配置」と「空間の履歴」という言葉を使って、日本人の心と空間認識について思索しています。わたしは、その「空間の履歴」という言葉に大きな刺激を受けました。東南アジアでのフィールドワークでぼんやりと考えていたことが、この「履歴」という言葉のなかに凝縮されていると感じたからです。それ以来、地域の「履歴」という言葉をわたしも使うことにしました。
 写真は、京都府北西部、夜久野町のある農村の風景です。この風景のなかに「履歴」が凝縮されています。集落背後の雑木林や杉林、竹林、そして谷間の水田や水路、谷頭のため池、それら一つひとつの「履歴」が重なり合って、地域の「履歴」があるわけです。もちろん、「履歴」という以上、その形成に関わった人たちがいる(いた)ことは言うまでもありません。こうした人々の活動も含めて、土地利用の「履歴」の総体を描くこと、これが、いま進めようとしているわたしの地域研究です。

京都府夜久野町、才谷の集落。谷筋に広がる水田は、ちょうど田植えの準備が整ったところ。水田やため池、水路、背後の里山の雑木林や植林された杉林は日本の農村の景観を構成する重要な要素で、これらから地域の「履歴」を立ち上がらせることができるかどうかは、調査者の観察眼にかかっている。

共通科目 熱帯環境利用論

田中耕司 (たなか こうじ)
E-mal:kjtanaka@cseas.kyoto-u.ac.jp