<< 東南アジア地域研究専攻 2000年度目次へ戻る

2000年度目次(東南アジア地域研究専攻)

  第二十四回 「地域の「履歴」を読む−クミリを例に」
 
 

Contents

1.「空間の履歴」

2.土地利用変化を読む

3.熱帯の油料作物

4.クミリという有用樹種

5.クミリの利用

6.クミリの栽培奨励

7.クミリからみた地域の「履歴」

8.地域の「履歴」を綴る

  

6.クミリの栽培奨励

 多様な用途があり、いまも料理素材として需要の高いクミリを、森林地帯(政府が森林局の管理のもとにおいている国有地)やその周辺の荒蕪地の植林や緑化に役立てようとする政策が進められています。
 クミリがこのような植林(緑化)樹種として利用されるようになったのは最近のことではありません。すでにオランダ植民地時代からforest reserveにクミリを植えることが奨励されてきました。1920年代〜30年代の森林官の報告に、当時盛んに行われていた焼畑耕作の放棄地にクミリを植えることが有益だという記述が出てきます。森林局は、クミリの利用法や栽植法などについても実験をしていました。例えば、クミリの材がマッチの軸の製造に有効だとか、子実が乾性油の原料として良い、というような報告があります。こういう記録から、この時代に住民に対してクミリの栽培を奨励したことがうかがえます。焼畑耕作によってアランアラン草地になった森林地帯にクミリを植えて森林を復活させようとしたわけです。
 1970年代に始まった経済発展の時代にもクミリの栽植が奨励されました。それは、農業生産が活発になって、商品作物を栽培するために住民が付近の森林地帯へ農地を広げるようになったために、彼らの森林地帯への「侵入」を防ぐための対策として打ち出された政策です。南スラウェシ州では、すでに住民の侵入を防げなくなったために、森林地帯であろうとも、すでに開墾した農地にクミリのような有用樹種を植えれば、その農地の使用を認めるという政策が打ち出されました。1980年代末のことです。クミリはそういう植林事業のもっとも有力な樹種として奨励されています。

 緑化事業のために植林されたクミリの苗。幼木のころは、葉が鋸歯状であるが、成木になるとハート形となる。