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第3回(通算第28回)
「パキスタンにおけるNGO活動―宗教と民族がもつ活力を探る―」
子島進:連環地域論講座

Contents

1.カラーコラムの村から

2.宗教センターと社会サービス

3.外からの力をうまく利用する

4.カラーチー

5.イーディー福祉基金

6.慈善事業家=イスラーム聖者?

7.オーランギー・パイロット・プロジェクト

8.まとめ

2宗教センターと社会サービス

 もう少しカラーコラムの様子を見ていこう。イスマーイール派の信徒が大部分を占める地方では、村の中心部に、必ず彼らの礼拝所兼集会所である「ジャマーアト・ハーナ」が設置されている。写真奥、水色の柱の建物がそれである。その庭では、アーガー・ハーン財団系のNGOが運営する学校の授業が行われている。校舎が粗末で手狭なため、天気の良い日は青空教室なのだ。女の子たちが勉強しているのは国語や算数であり、他宗派の子供たちも混じって学んでいる。イスマーイール派独自の宗教教育は、学校教育とは別制度として設けられている。
 狭隘な谷間に位置する村々では、空き地として残されている平地はほとんどない。ジャマーアト・ハーナの敷地の一部を利用して、やはり同財団系列の診療所も設置されている。教育や医療施設の併置によって、宗教的なセンターが社会的にも中心的な機能を果たしている。これらの組織には、高度の事務能力と専門性を習得した職員が配されている。と同時に、村人自身のボランティア活動こそが、その基盤を支える重要な拠り所となっている。


イスマーイール派の村の中心には、
必ずジャマーアト・ハーナが位置している。