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第3回(通算第28回)
「パキスタンにおけるNGO活動―宗教と民族がもつ活力を探る―」
子島進:連環地域論講座

Contents

1.カラーコラムの村から

2.宗教センターと社会サービス

3.外からの力をうまく利用する

4.カラーチー

5.イーディー福祉基金

6.慈善事業家=イスラーム聖者?

7.オーランギー・パイロット・プロジェクト

8.まとめ

5イーディー福祉基金

 イーディー福祉基金は、パキスタン全国に300以上の支部をもつ。その活動は、事故現場への救急車の派遣から孤児院の運営、身の置き所のない女性のための避難所まで多岐にわたっている。特に本部のあるカラーチーでは、民族対立と宗派抗争が繰り返された1990年代、イーディーの救急活動は人道的な見地から、市民から高く評価された。カラーチー市当局が十分な救急活動を行えないため、NGOが自前で救急車を購入し、病人や怪我人の搬送を担っているわけだが、多くの市民が事故を目撃した際に電話するのは、後者だと言われている。
 民族や宗派の衝突を厳しく批判するイーディー氏だが、その活動は彼の生まれたメーモンという商人コミュニティに根ざしている。多くのムスリム商人のコミュニティでは、英領インド時代から、コミュニティ内部の福祉活動に意を注いできた。メーモン内部での福祉活動から出発し、それを乗り越える形で発展してきたのがイーディー福祉基金なのである。


仕事に追われるイーディー氏。
オフィスはカラーチーのミタダール地区にある。