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第3回(通算第28回)
「パキスタンにおけるNGO活動―宗教と民族がもつ活力を探る―」
子島進:連環地域論講座

Contents

1.カラーコラムの村から

2.宗教センターと社会サービス

3.外からの力をうまく利用する

4.カラーチー

5.イーディー福祉基金

6.慈善事業家=イスラーム聖者?

7.オーランギー・パイロット・プロジェクト

8.まとめ

まとめ

 カラーコラムのアーガー・ハーン財団の活動から、イーディー福祉基金、そしてオーランギー・パイロット・プロジェクトまで、パキスタンの代表的NGOを駆け足でめぐってきた。そこから見えてきたのは、パキスタンを論じる際に、しばしば否定的に語られる宗派や民族集団だが、建設的な方向で社会に寄与する活力をも生み出してもいるということである。アーガー・ハーン財団は、イスマーイール派住民のエネルギーを集約することによって、大きな実績を示すことに成功した。イーディー福祉基金は、イスラーム聖者の風貌を漂わせるイーディー氏が、メーモンという商業コミュニティの福祉活動を大きく発展させたものである。OPPの初期の活動において中心的を担ったのは、ビハーリーの人々だった。
 NGOにとって、最も重要な初期の活動が、特定の民族や宗派共同体によって担われたからこそ、その効果も迅速に発揮され、「普遍的モデル」へと格上げされていく道筋が準備された。そして、ある段階から彼らの活動が大きく展開していくことができたのは、宗派や民族に根ざしながらも、それを排他的な価値基準とせず、より広い地平を目指すことを志していたからとも言えるだろう。