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6.慈善事業家=イスラーム聖者? イーディー氏自身は宗教学者ではないが、パキスタンの民衆が表現するイスラームに、非常に近いところに位置していると、私には感じられた。端的に言えば、彼はイスラーム的な正義や公正を体現する聖者のように敬慕され、崇敬を受ける存在なのだ(一方で数多くの中傷も受けてきた)。 「こういう風に、毎日人が駆け込んで来るんですか?」との質問の答えが興味深かった。「そうだよ。だからお金がいくらあっても足りない。いつもお金をどう工面するかの算段で、頭が一杯だよ。ああ、若い女性が懺悔にやってきたこともある。『お父さん、私は生まれてからずっと貧しく、何度も他人の財布からお金を盗んできました。この私の罪を許してください』と泣くんだ。私に謝るんじゃなくて、あなたがお金を盗んだ人たちに謝りなさいと言って聞かせたんだ」 カラーチーから50キロほど離れた土地に、イーディー氏は「イーディーの村」を建設した。ここには、何百人という孤児たちと精神病の患者たちが暮らしている。そして、広大な敷地の一角に、イーディー氏とその夫人の墓がすでに用意されている。彼の死後、ここが多くの参詣者でにぎわう聖者廟となると予測することは、あながち的外れではないと思われる。
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