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第5回(通算第30回)
「民主政治時代の中央・地方関係」
玉田芳史:地域進化論講座

Contents

1.タイの中央・地方関係

2.併呑された地方権力

3.中央集権的な行政

4.学歴エリート:ニムマーンヘーミン一族

5.地元密着型資本:タントラーノン一族

6.官僚と政治家を使うスパー一族

7.首相を出したチンナワット一族

8.遠い地方の時代

併呑された地方権力


 タイでは、近隣諸国の植民地化と軌を一にして19世紀後半以後に首都バンコクが地方へ支配を浸透させてゆく。国主に代表される在地権力者はブルドーザーでならされるようにつぶれた。
 地方支配者のなかで最大規模を誇ったチェンマイ王家も例外ではない。最後の王の本家筋にあたるチャオ・ポンイン(1905-89年)は首都の中等学校に学び、1920年から10年間ほどイギリスに留学した。31年1月、中央官庁に入省するものの、初任給145バーツと留学組としては月並み以下の待遇しかえられず、じきに退職して家産の管理運営に当たるようになる。彼は家産をすり減らし、89年5月失意のうちに世を去ることになる。