アフリカ地域研究専攻

Division of Africa Area Studies

 アフリカ地域研究専攻は、下記(1)~(3)の特性と課題に対応させて、学際的なフィールドワークをとおしてアフリカ地域の固有性に対する理解を深めていくために「生業生態論」「社会共生論」「アフリカ潜在力」の3つの研究指導分野を置いています。

 (1) 強靱な熱帯生態系のもとで自生的に展開してきた歴史を有するアフリカ大陸では、伝統に裏打ちされた調和的な自然と人間の共存関係がかたちづくられてきましたが、今日、人々の生活とその基盤にある生態資源利用のあり方は、グローバル市場経済や地球規模の環境問題と無関係ではいられません。また、(2) アフリカでは歴史上多様な民族が共生してきましたが、植民地支配を経て20 世紀中葉以降に本格化した国民国家としての再編成プロセスにおいて、民族単位での分節化の傾向がつねに潜在し、国家や社会の統合の基盤が脆弱なものにとどまっています。さらに、(3) 独立後のアフリカ諸国では、開発政策、紛争処理、環境問題など、さまざまな課題への取り組みにさいして、外部から持ちこまれた「世界標準」の考え方を押しつけられるなか、アフリカが本来もっている潜在力に根ざした、内発的発展の道を探ることが課題となっています。

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講座・指導教員紹介

生業生態論講座

農耕、牧畜、狩猟、採集、漁撈、商業、製造業などの伝統的な基盤をもつ生業の構造と機能、およびその自然的基盤を広義の生態学的手法によって分析します。それらの生業とより広い世界の政治・経済・社会的な枠組みとの関係に着目し、生計戦略や地域経済の特質を再評価しつつ、現代アフリカにおける人間と自然の関係のあり方を探究します。

伊谷 樹一(いたに・じゅいち)

E-mail: itani.juichi.4v@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 アフリカの在来農業における技術体系を農業生態学的に分析するとともに、自然に関する人びとの認識と農業との関わりについて研究している。また、外来の技術がどのようなプロセスを経て在来農業と融合し、新たな農耕形態として社会に内在化していくかを探る。

〔農業生態論、アジア・アフリカ地域研究演習、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

大山 修一(おおやま・しゅういち)

E-mail: oyama.shuichi.3r@ [この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 アフリカ各地において、自然生態や気候変動、国家の政治・経済、農村の社会関係、民族性との関連で、人びとの生活や環境利用の特質について調査している。南部アフリカでは、乾燥疎開林に対する農耕民の環境認識、農業生態系、市場経済や土地法の改正にともなう社会動態に関心をもっている。西アフリカのサヘル帯では在来知識を応用した砂漠化防止対策のあり方を検討し、緑化の実践をめざして現地調査を続け、農耕民と牧畜民の紛争予防にむけて活動を続けている。

〔アフリカ環境学、アジア・アフリカ地域研究演習、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

安岡 宏和(やすおか・ひろかず)

E-mail: yasuoka.hirokazu.7n@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 中部アフリカ、コンゴ盆地の熱帯雨林に住むピグミー系狩猟採集社会でのフィールドワークをとおして生態人類学・歴史生態学の研究をおこなってきた。今後は、コンゴ盆地において森林資源の持続的利用を確立するために、これまでの研究成果をどのように活用できるかを模索していきたいと考えている。

〔生態史論、地域研究論、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

佐藤 宏樹(さとう・ひろき)

E-mail: sato.hiroki.2e@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 アフリカ大陸東部のインド洋沖に位置するマダガスカル島の熱帯林を主な調査地とし、遺伝学から生態学に至る多角的なアプローチを用いながら動植物のインタラクションによって成り立つ森林更新メカニズムの解明をめざしている。今後は熱帯林生態系がもたらす天然資源を利用する地域住民の活動も調査の対象とし、民族生物学や保全生物学の観点から持続可能な生態系保全のあり方について模索していく。

〔地域生態論、地域研究論、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

齋藤 美保(さいとう・みほ)

E-mail: saito.miho.2w@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 タンザニアにおいて、マサイキリンの仔育てに関する研究を行ってきた。その過程で、彼らの仔育ての多様性や社会構造について考察し、キリンを取り巻く多様な問題に関心を寄せてきた。今後は研究の対象を広げ、要塞型保全の多様な問題をレンジャーと農牧民それぞれの視点から捉えることに関心がある。そこから、異なるアクター間における自然資源をめぐる対立予防の在り方や、人間と野生動物たちの未来について、考えていきたい。

〔アフリカ地域研究演習I~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

塩谷 暁代(しおや・あきよ)

E-mail: shioya.akiyo.6s@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 中部アフリカ、カメルーンの都市と農村の調査をつうじて、農と食に関わる研究をおこなっている。都市では、市場(いちば)で農作物販売に特化した零細商人の調査から、都市-農村間の農作物流通とアクター間のネットワークについて考察してきた。農村では、主食作物であるキャッサバの生産・加工から商品化に至る過程とキャッサバ食文化に着目し、生計向上に向けたアクションリサーチに取り組んでいる。

〔アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

社会共生論講座

アフリカに暮らす人々が長い歴史をとおして培ってきた多様な文化的実践とその特性を、言語的・非言語的アプローチ双方を活用するフィールドワークによって把握します。その知見をもとに、現代の複合社会における多民族共存や地域文化形成のメカニズムと、それを支えている自然的、歴史的、社会的な基盤を解明し、アフリカにおける多元共生的な社会のあり方を探究します。

平野(野元)美佐(ひらの・のもと・みさ)

E-mail: hirano.misa.5s@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 アフリカ都市、具体的にはカメルーンの首都ヤウンデに暮らすバミレケというエスニック・グループについて、その経済活動を中心に文化人類学的研究を行ってきた。現在は、バミレケ社会にみられるコミュニティ内外の共生の知恵について研究している。また、貨幣とコミュニティ形成との関係に関心をもち、沖縄の模合(頼母子講)の調査、研究を行っている。

〔アフリカ都市社会論、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

高田 明(たかだ あきら)

E-mail: takada.akira.2z@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 南部アフリカの狩猟採集民として知られるサン(ブッシュマン)をおもな対象として、次の4つの領域において研究を進めている。養育者─子ども間相互行為、自然環境や生業様式と養育者─子ども間相互行為との関わり、環境認識、エスニシティの変遷。さらに、これらの研究を関連づけて、サンの社会的相互行為を組織化する文化的構造を明らかにしようとしている。

〔相互行為論、アジア・アフリカ地域研究演習、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

金子 守恵(かねこ・もりえ)

E-mail: kaneko.morie.3z@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 エチオピアにおいて女性の土器職人を対象とし、彼女たちの身体技法に注目してその継承と技術的な革新について人類学的な研究をすすめてきた。また、アフリカに暮らす人びとが環境と関わる過程で生成する「もの」として、工芸品、農産物、土産物、廃棄物などに着目し、グローバルな文脈におけるアフリカのものつくりをめぐる在来知の生成について考察している。コミュニティ博物館において、地元の人びととともに内発的発展につながる研究成果を発信する活動にも取り組んでいる。

〔生業とものつくり、アジア・アフリカ地域研究演習、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

阿毛 香絵(あもう・かえ)

E-mail: amo.kae.6c@@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 専門分野は文化人類学・民族学であり、西アフリカのイスラーム社会、特にセネガルのスーフィズム教団と、高等教育、政治との関連について研究してきた。フランス植民地化における教育政策やアラブ地域の改革主義、ローカルな宗教性などから影響をうけた多様なイスラームの動きは、近・現代西アフリカの教育や若者たちの政治参加にどのような影響を与えてきたのか。文化表象やポピュラーカルチャーとの関わりにも関心を持ち、人々の生活に密着したエスノグラフィの手法を用いて描くことを試みている。
 近年は、より影響力を増すメディアやデジタル空間と若者文化や都市文化、ディアスポラにも着目し、アフリカ地域と世界の動きとを結び付けながら、アジアやより広いイスラーム圏との比較の観点からも研究を進めている。

〔アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

アフリカ潜在力講座

アフリカが今日直面している種々の問題を歴史的経緯と社会的動態のなかで同定し、アフリカ社会が外部世界との折衝・交渉のなかで創造し実践・運用・生成してきた問題解決のための動的な力を「アフリカ潜在力」として評価します。この概念を基盤として、現代世界の困難を克服し人類の未来を展望するためのアフリカ発の知の様式と実践的な方策を探究します。

高橋 基樹(たかはし・もとき)

E-mail: takahashi.motoki.2c@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 アフリカの政治経済と開発を主要な関心事項とし、植民地分割によって外生的に導入されたアフリカの国家と市場経済が、その後どのようなものとして形成され、今日どのように変化しつつあり、人々の暮らしとどのように関わっているのかを研究対象としている。加えて、開発を後押しすることを掲げて行われる援助活動が、アフリカの政治・経済・社会や人々の暮らしにどのような影響を及ぼすのかについても考察を重ねてきた。具体的には、ケニアをはじめとする東アフリカ諸国を主な調査研究対象としている。

〔アフリカ開発論、地域研究論、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

山越 言(やまこし・げん)

E-mail: yamakoshi.gen.4s@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

 西アフリカに生息する大型野生動物の行動・生態や保全状況を、生態学的な手法を用いて明らかにしてきた。また、西アフリカの焼畑農村の伝統的景観が保持してきた、森林および野生動物の保全に関する潜在的可能性に注目し、背景となっている歴史的、生態学的、社会学的要因の解明を進めている。

〔野生動物保全論、地域研究論、研究発信トレーニングⅠ・Ⅱ、院生発案国際共同研究、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

原田 英典 (はらだ・ひでのり)

E-mail: harada.hidenori.8v@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]

アフリカとアジアをフィールドとして,人間の生活に必須の水・衛生のあり方について,主に健康リスク,物質循環,および人々の水・衛生の受容の観点から研究している。最近の主な研究テーマは、都市スラムの若者との協働による糞便汚染・下痢リスクの可視化アクションリサーチ,循環型ドライトイレの長期的受容性,自律・分散型の水・衛生とデジタル・イノベーション,健全な水環境の管理,都市部の下水・廃棄物管理戦略など。

〔水・衛生論、地域研究論、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕

中尾 世治 (なかお・せいじ)

E-mail: nakao.seiji.2i@[この後に kyoto-u.ac.jpを付けてください]

フランス語圏西アフリカの宗教、政治、経済、思想の歴史を対象にして、アフリカの人たちにとって近代とはどのようなものであり、どのように自らと自らの社会を構築しようとしてきたのかを明らかにしてきている。また、工学、建築学、現代美術、科学コミュニケーションとの共同研究・実践を実施しつつ、そのような共同研究・実践がどのようなものでありうるのかというメタ研究(研究の研究)を探求している。

〔アジア・アフリカ地域研究演習、アフリカ地域研究演習Ⅰ~Ⅳ、アフリカ論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アフリカ地域研究公開演習、アフリカ臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕