研究科長あいさつ

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科は1998年4月に発足しました。母体になったのは、京都大学の東南アジア研究センター(現在は東南アジア地域研究研究所)とアフリカ地域研究センターです。2018年で21年目に入ります。5年一貫制の大学院で、東南アジア地域研究、アフリカ地域研究、グローバル地域研究の3専攻から構成されています。 略称のASAFAS(アサファス)を通称として用いたくなるような長い名前「アジア・アフリカ地域研究研究科」は、「アジア・アフリカ」を対象とした「地域研究」を行う大学院ということを表しています。対象地域は、具体的には東南アジア、南アジア、西アジア、アフリカです。

地域研究は一般にはあまりなじみがないかもしれません。area studiesの訳語です。一部で混同されることがあるコミュニティ研究ではありません。アジアやアフリカへ出かけるだけでよいというものでもありません。フィールドに赴いて、五感を存分に働かせ、見る、聞く、触る、嗅ぐ、食べることで、調査地の人びとや社会をまるごと理解することを目指します。プロクルーステースの寝台(Procrustean bed)よろしく、観察者の価値観や基準を一方的に押しつけることは禁物です。現地の人びとの考え方を理解することが肝要です。そのためには、自然環境、文化・歴史、政治・経済、国際関係などを把握する必要があります。観察者の見方を、現地の人びとに投げかけてキャッチボールを行い、双方向の理解を深めます。

ここで大切なのが語学力です。観察する側の言語ではなく、観察される側の言語です。たとえば、アジアで英語がもっともよく普及している国のひとつフィリピンでも、聞き取りから得られる情報の量や質は、英語を用いた場合とタガログ語を用いた場合では大きな違いが生じるようです。日本で日本人から聞き取ろうとすれば、英語ではなく、日本語のほうが有効であるのと同じです。話し言葉のみならず、書き言葉も重要なことはいうまでもありません。

対象とするフィールドをよく理解しようとすれば、語学力に加えて、多種多彩な分野や領域の学知を借りなければなりません。地域研究は、対象を多角的に捉える必要があるため、自ずと文理融合ないし学際的な性格を備えています。たとえばASAFASの教員の出身学部は、理学部、農学部、医学部、工学部、水産学部、文学部、法学部、経済学部、教養学部、国際関係学部、外国語学部などと多様であり、在学生の出身学部も同様に多様です。各自は、地域研究者であろうとすれば、それぞれのディシプリンの殻を破って外へ飛び出す必要があります。高谷好一先生はそれを「補陀洛に向かって船出する」と表現されていました。的確に理解し、明解に説明するためには、ほかのディシプリンの助けを借りる必要があります。

今日では、グローバル化とローカル化が同時に進んでいます。グローカル化(glocalization)です。そこでは「地球的視野で考え、各地の実情に即して行動する(think globally, act locally)」ことが求められています。地球規模で物事を抽象的に考える人や、自分が住まう地域で足下を固めて行動する人は少なくないでしょう。しかしながら、アジア・アフリカ地域の現地社会の文脈で考えたり行動したりできる人は多くないでしょう。そうした人材を育てるのが地域研究です。

地域研究の学徒は日本で図書館や研究室に籠もってばかりはいられません。地域研究にとっては、フィールドワークが生命線です。ASAFASでは、学生のフィールド派遣を支援するために、次世代型アジア・アフリカ教育研究センターを設置し、学生派遣のための予算獲得に努めてきました。現在は「海外拠点の機能強化によるアジア・アフリカ地域対応の高度グローバル人材育成」プログラムを実施中です。今後も、教員と学生が一体となって総合的な地域研究を進めていきます。

研究科長 玉田 芳史

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